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野田総務相 ピント外れの給与返納

 野田聖子総務相が関係する情報漏洩(ろうえい)問題は、情報公開を担当する大臣として野田氏の適格性を疑わせる。

 大臣給与の返上で済ませられる問題ではない。責任をどう考えるか、野田氏はより明確な形で国民に説明すべきだ。漏洩禁止規定の新設など、制度の見直しも欠かせない。

 発端は野田氏の秘書が今年1月、仮想通貨関連会社の関係者を同伴し、金融庁の担当者を事務所に呼んで仮想通貨の販売規制に関する説明をさせたことだった。その会社は金融庁から無登録営業の疑いで調査を受けていた。

 政治家秘書が業者を伴って監督官庁の担当者と面会すること自体、問題をはらむ。役所への圧力と受け取られても仕方ない。

 5月初め、朝日新聞が面談記録を金融庁に情報公開請求した。金融庁は総務相側に、同紙から公開請求があったことを伝えた。

 金融庁の担当者は内部調査に、「閣僚が関わっているので、情報を共有した方がよいと思った」と説明しているという。

 問題はここだ。請求を受けた官庁が請求者の名前を“ご注進”よろしく伝える。これでは、普通の人なら請求をためらうだろう。

 情報公開法は法の目的として、国民の理解と批判の下に公正で民主的な行政が行われるようにすることを挙げている。金融庁の振る舞いは法の趣旨に反する。

 野田氏は本来なら、金融庁が情報を伝えてきたとき、そのこと自体を問題にすべきだった。

 2年前、富山県など地方自治体の職員が議会議員の政務活動費不正受給に関係して、公開請求をした人の名前を当の議員に伝えていたことが問題化した。

 そのとき総務省は、個人情報の適切な取り扱いを求める通知を全国の自治体と議会に出している。請求者の情報を第三者に伝えるのは「開示請求の萎縮や制度の信頼性の低下につながる恐れがある」との内容だ。指摘は野田氏のケースにそのまま当てはまる。

 総務相は自身の閣僚給与全額約160万円を自主返納すると明らかにした。その理由は、金融庁から開示決定前に伝えられた請求内容を第三者に漏らし、公開制度の所管閣僚として不適切と判断したからだという。

 総務相として一番に問題にしなければならないのは、情報を第三者に漏らしたことではない。金融庁の“ご注進”をいさめることができなかったことだ。ここを取り違えるようでは、野田氏が信頼を取り戻すのは難しい。

(8月9日)

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