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東京医大入試 あしき慣行の根を断て

 同窓生の子弟らの裏口入学、女子や浪人生への不利な扱い…。東京医科大で長年にわたって続いてきた入試の不正は、組織ぐるみだった疑いが拭えない。さらに調査を徹底し、全容を明らかにする必要がある。

 文部科学省幹部の汚職事件に絡み、入試不正の内部調査にあたった弁護士らが報告書を公表した。受験生への背信行為、女性差別である不正が「あしき慣行」となっていたと指摘。大学の自殺行為に近いと厳しく指弾している。

 不正は2通りの方法があった。一つは1次試験での加点だ。昨年と今年の入試では計19人の得点を水増しした。多くは同窓生の子弟とみられ、大学への寄付金を増やす狙いがあったようだ。

 もう一つは、2次試験の小論文での得点調整だ。女子のほか3浪以上の男子を合格しにくくする操作を10年以上前から続けていた。女子は満点の100点を取っても80点にしかならなかった。

 調査委員会は、前理事長が不正を主導し、前学長が追認したと認定した上で、大学のほかの幹部らも関与して組織的に行われた可能性を示した。一方、入試に関わってきた幹部らは「記憶にない」などと関与を否定している。

 ある程度承知はしながら、知らぬふりをしてきたようにも受け取れる。責任逃れの弁を弄(ろう)すれば、信頼の回復はおぼつかない。理事長に逆らえない体制だったとすれば、大学運営のあり方を根本から見直さなければならない。

 内部調査で具体的に明らかになった不正は、まだごく一部にとどまる。調査期間が短かった上、関連する資料が検察に押収され、調査には限界があった。東京医大は追加調査のため第三者委員会を設けるという。不正の根絶にどれだけ腰を据えて取り組めるか、大学の姿勢が問われる。

 不合格になった受験生への対応についても、追加合格や金銭的な補償を検討する姿勢を示してはいるものの、明確な考えを打ち出してはいない。「文科省との協議を踏まえて…」などと先送りするのは主体性を欠く。

 全国の医学部で学ぶ女子学生の割合は20年ほど前に3割に達して以降、頭打ちだ。東京医大以外でも、入試で女子が不利な扱いを受けている可能性がある。

 文科省は国公立大を含む全ての医学部を緊急調査する。大学教育のあり方や医師を育成する仕組みの根幹に関わる問題だ。何よりまず、各大学が自ら足元を点検する姿勢が欠かせない。

(8月9日)

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