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被爆地の訴え 耳傾けない政府の不実

 被爆から73年の原爆の日を迎え、長崎で式典が行われた。田上富久市長は平和宣言で日本政府に対し、核兵器禁止条約への賛同を求めた。政府は被爆地の訴えを受け止めるべきだ。

 田上氏は条約採択と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)へのノーベル平和賞を「地球上の多くの人々が核兵器のない世界の実現を求め続けている証し」と指摘している。政府には、唯一の戦争被爆国として世界を導く道義的責任を果たすよう訴えた。

 今回の式典には、現職の国連事務総長として初めてグテレス氏も参列している。あいさつで「核保有国は核の近代化に巨額の資金を費やし、軍縮プロセスは失速し停止しそう」と世界の現状に危機感を示し、「核廃絶は国連の最優先課題」と述べた。

 米国の「核の傘」に依存し、条約に反対の立場を取る日本政府との隔たりが改めて鮮明だ。安倍晋三首相は、広島でのあいさつと同様に「核兵器のない世界の実現に向けて粘り強く努力を重ねることはわが国の使命」とする一方、条約には触れていない。

 広島で被爆者団体の代表者らと面会した際、条約批准への努力を求められ「核保有国、非保有国の協力を得ながら実践的な取り組みを進める」とするにとどめた。記者会見でも「現実的なアプローチで国際社会をリードしたい」と条約に距離を置いている。

 保有国と非保有国の橋渡しに努めるとし、核軍縮に関する「賢人会議」を昨年立ち上げたことを日本の取り組みとしてアピールしている。とはいえ、両者をどのように仲立ちしていくのか、具体的な方策は見えない。

 むしろ米国寄りの姿勢を強めているのが実情だ。トランプ政権は2月に「使える核」とも称される小型核の開発などを盛る新核戦略を公表した。核なき世界に逆行するにもかかわらず、日本は「高く評価する」との河野太郎外相の談話をいち早く発表している。

 きのう被爆者代表として「平和への誓い」を朗読した田中熙巳さんは、首相が条約に署名も批准もしないと昨年の原爆の日に公言したことを「極めて残念」と非難した。首相と面会した被爆者は「橋渡しするには、まず自分が核の傘から出ることだ」と憤る。

 首相は被爆者に寄り添うと述べた。口先だけでなく、行動で示す必要がある。被爆者の平均年齢は82歳を超えている。条約の発効に向けて自ら批准し、核廃絶へ主導的な役割を果たすべきだ。

(8月10日)

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