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「沖縄戦の図」の展示で知られる佐喜真(さきま)美術館は、米軍普天間飛行場の敷地に食い込むように建っている。一角には先祖を尊ぶ沖縄特有の大きな亀甲墓がある。館長の佐喜真道夫さんが基地内にある所有地の一部を取り戻して建設した

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1994年の開館まで壁が幾つも立ちはだかった。最大の難関は用地探し。設計を頼んだ建築家真喜志好一(まきしよしかず)さんは「心を癒やし魂を鎮める緑と海。心と祈りを伝える亀甲墓に近い場所」と条件を挙げた。基地の島には見合う民有地が容易に見つからない

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探し始めて3年。普天間飛行場内のフェンス沿いに適地があることに気付いた。米軍に接収された先祖伝来の土地だ。防衛施設局を通じて返還交渉を始めたが、担当者に誠意が見られず一歩も前進しない。つてをたどり米軍と直接交渉すると「ミュージアムを造るなら」と応じた

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佐喜真さんは経緯を記した著書「アートで平和をつくる」に書いている。長い間、沖縄のささやかな願いの邪魔をし屈服させてきたのは、日本政府ではないか、と。この思いは知事になり辺野古への新基地建設に反対し続けた翁長雄志(おながたけし)さんも同じだろう

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琉球の併合、沖縄戦、米軍基地負担…。翁長さんは自由や人権をないがしろにされてきたむなしさを沖縄県民の「魂の飢餓感」と表現した。政府や本土の人々はなぜ分かってくれないのか。がんを患ってやせ細りながら、眼光は衰えなかった。旅立った後も魂はそう問い続けるに違いない。

(8月10日)

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