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憲法の岐路 麻生派の提言 首相のため地ならしか

 改憲論議を加速させる地ならしなのか。

 9月の自民党総裁選に立候補する安倍晋三首相に麻生派が政策提言をした。「2019年夏の参院選までに憲法改正の国民投票を実施する」と盛り込んでいる。拙速な方針だ。

 首相は26日に立候補を正式に表明した。石破茂元幹事長との一騎打ちの構図が固まっている。

 改憲は首相の宿願だ。出馬表明では直接触れなかったものの、秋の臨時国会への党改憲案提出などを柱とする公約を準備する。党がまとめた4項目のうち重視するのは9条への自衛隊明記である。きのうも講演で「違憲論争に終止符を打とう」と主張した。

 対する石破氏は、戦力不保持を定めた9条2項を削除し、自衛隊を「戦力」と位置付けるのが持論だ。ただし、9条改憲は「緊急性がない」として選挙戦では他の項目を優先とする。

 首相としては総裁選で党内論議に決着をつけたいのだろう。

 麻生派は改憲案提出からさらに歩を進め、国民投票の時期に踏み込んだ。提言を受け取った首相は経済や外交政策全般について「基本的な考え方は全く一緒だ」と応じている。首相の意向を代弁する形で今後も派閥からの提言が続くのではないか。

 自衛隊明記は昨年5月に首相が提案し、自民が慌ただしく条文案を取りまとめた。「必要な自衛の措置」をとるための実力組織として自衛隊を保持するという曖昧なものだ。2項の削除を主張する声も残る中、本部長に対応を一任する形で押し切った。

 党内でさえ議論が尽くされておらず、発議できる案ではない。

 共同通信が25、26両日に行った世論調査では、臨時国会への自民案提出について「反対」との回答が49%で、「賛成」の36・7%を上回った。連立を組む公明党を含め、自民以外の支持層はいずれも反対が多数を占める。首相の意向は世論と懸け離れている。

 自衛隊明記は支持が40%、不要が30・9%である。強引に国民投票に持ち込めば、社会に深刻な分断を生むことになる。

 そもそも改めなければならないのか、一から議論が必要だ。新総裁に期待する政策として多くの人が挙げるのは「景気や雇用など経済政策」「年金、医療、介護」である。総裁選がどんな結果になろうと、改憲ありきで突き進む理由にはならない。

(8月28日)

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