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日ロ経済活動 成果を生むのか疑問だ

 前進したという実感は乏しい。

 安倍晋三首相が、ロシアのプーチン大統領との22回目の首脳会談に臨んだ。今回は北方領土での共同経済活動を巡り、具体的な内容と進め方を確認し合っている。

 2016年12月の合意から1年半余りが過ぎても経済活動を始めるめどが立たない。政治情勢は変化し、両国間の隔たりはむしろ鮮明になっている。

 経済活動を通じて信頼関係を築き、平和条約締結、北方領土返還の道筋を付ける―との外交戦略を日本政府は描く。14年のクリミア半島併合後、欧米から経済制裁を科され、日本の協力を得たいロシア側の思惑と一致した。

 大きな障壁がある。ロシアは経済活動に自国の法制度を適用する構えでいる。北方四島を「固有の領土」とする日本は相手の施政権を認められない。そこで、互いの立場を損なわない「特別な制度」の創設を提案するが、ロシア側に応じる気配はない。

 停滞する間、ロシア政府は北方領土を経済特区に指定した。発電所や工場の建設、光ファイバー敷設などで外国企業の投資を積極的に受け入れている。ロシア企業も進出しており、極東発展相は「ロシア単独での開発を急ぐ用意がある」と発言している。

 日ロ双方の安全保障政策が事態をより複雑にしている。

 米国の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を日本が導入することに、ロシア高官は繰り返し「深刻な懸念」を示す。返還に伴って北方領土に米軍が進出するとの警戒心も強い。

 安倍首相は国会で「米軍の配置には日本の同意が必要」と述べたものの、ロシア政府に対しては可能性を否定できずにいる。

 対米関係が悪化するプーチン政権は、ミサイル防衛網を構築する米軍への対抗措置として、北方領土での軍備拡充を加速する。新型地対艦ミサイルや戦闘機を配備し空港を軍民共用に切り替えた。軍事演習も実施している。実効支配は強まるばかりだ。

 首相は会談後の会見で、領土問題について「私たちの手で必ず終止符を打つ」と強調した。プーチン大統領は同調していない。そもそも、短期間で解消できる問題ではないだろう。

 ロシア側が突き付ける法的な問題、安保上の懸念にどう対処するのか。首相は丁寧に説明してほしい。確たる見込みもないまま、共同経済活動に国費を投じることは認められない。

(9月12日)

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