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憲法の岐路 自民総裁選 国民の理解言うのなら

 自民党の総裁選挙では憲法が争点の一つになっている。選挙の結果はこれからの改憲論議に影響する。

 先日の記者会見で注目すべきやりとりがあった。安倍晋三首相が改憲の是非を最終的に決める国民投票の実施をにらみ、秋の臨時国会に党の改憲案を提出する考えを示したのに対し、石破茂元幹事長が「国民の理解のないまま国民投票にかけてはいけない」と反論した。

 各種の世論調査を見ると、改憲が必要と考える国民は多くない。共同通信の8月下旬の全国電話世論調査では、次の総裁に期待する政策で「憲法改正」を挙げたのは7・4%にとどまる。

 改憲に国民の理解が深まっているとは言えない状況だ。当選するのが安倍氏、石破氏のどちらにしろ、手続きを前に進めることには慎重であるべきだ。

 首相は総裁選で早期の改憲を目指す考えを繰り返し述べている。記者会見では「スケジュールありきの批判は承知している」としながらも、臨時国会への提出を目指す姿勢を改めて表明した。

 こんな理由付けだった。

 憲法を変えるかどうかを決める権利は国民にある。具体的には国会による改憲発議を受けた国民投票で決まる。これまで国民が権利を行使する機会はなかった。国会議員が権利を行使させない、となっているのであれば、国会は無責任のそしりを免れない―。

 国会答弁などで披歴してきた論法を繰り返した。

 今の投票法には国民の理解や権利の問題以前に、重大な欠陥がある。第一に、最低投票率の規定がなく、国民全体から見れば比較的少ない賛成票で改憲が決まりかねないことだ。ボイコット運動につながるとして自民が反対し、盛り込まれなかった。

 第二に運動資金や広告の規制が緩い。資金力の豊富な勢力が金の力にものを言わせてテレビCMを独占し、結果を誘導する心配が否定しきれない。

 首相は会見で「国民投票に付すことで急速に議論が深まり、理解が進むこともある」とも述べている。法律が抱える危うさに目をつむったまま投票実施を主張することこそ無責任だ。

 あす14日には日本記者クラブ主催の討論会と党青年局・女性局主催の討論会がある。国民投票の前提となる国民の理解についてどう考えるか、両氏に聞きたい。

(9月13日)

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