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サイト遮断 法制化ありきで進めるな

 海賊版サイトへの接続を強制的に遮る「ブロッキング」の法制化が、結論ありきで進められようとしていないか。丁寧な議論を欠いたまま押し切ろうとする政府の姿勢が目につく。

 漫画や雑誌を無料で読める違法サイトである。政府は、対策を検討するために設けた有識者会議に、法制化を「政策的な選択肢」とする中間報告書の素案を示した。委員から異論が相次ぎ、了承は得られなかった。

 政府は4月、悪質な3サイトについて通信事業者に自主的な遮断を求めると同時に、法制化の方針を打ち出した。有識者会議で9月半ばに中間報告をまとめ、意見公募を経て来年の国会に法案を提出する―。想定した日程通りに事を急ぐこと自体に無理がある。

 違法サイトによる著作権の侵害は深刻な被害を生んでいる。野放しにすれば、出版社の経営や漫画家らの生活を脅かし、出版文化を細らせることにもつながる。被害を防ぐことは重要だ。

 ただ、ブロッキングは、憲法が定める「通信の秘密」を侵害する恐れが大きい。誰がどのサイトを閲覧しようとしているかを全て検知する必要があるからだ。通信の秘密が侵されれば、プライバシーや内心の自由は守れなくなる。

 遮断は現在、児童ポルノのサイトに限って認められている。人権の根幹である人格権を損ない、被害回復が困難なため、「緊急避難」と位置づけられた。ごく限られた例外であり、著作権の侵害にそのまま当てはめられない。

 歯止めが外れ、遮断の対象がなし崩しに広がれば、政府を批判する意見を抑え込む手段として使われる恐れも出てくる。そのことも心に留めておきたい。

 海外では40カ国以上が遮断する仕組みを設けているという。ただし日本は、プライバシー権を保障する法制度の基盤が欧州のように強くない。法体系全体を見渡した慎重な検討が必要になる。

 有識者会議では、遮断の法制化を求める声が出版業界から出ているものの、議論が煮詰まるにはほど遠い状況だ。広告の規制をはじめ、ほかにも検討すべき対策は多い。遮断には抜け道があり、効果は薄いと指摘されてもいる。

 インターネットの時代に、通信の自由を守りつつ著作権を保護する仕組みをどうつくるか。関係する業界が連携して取り組むことが欠かせない。幅広い層が参加できる開かれた議論の場を、出版社や通信事業者が協力して設けることから始められないか。

(9月14日)

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