長野県のニュース

斜面

1912年、日本が初めて五輪に参加したストックホルム大会。東京高等師範学校の金栗四三は足袋をはいてマラソンに挑んだ。足袋はかかとやつま先を補強してあったがすぐ破れた。金栗は日射病で意識を失って27キロ付近で棄権した

   ◆

帰国後、金栗は足袋の職人と改良に取り組んだ。底にゴムを張り、留め金具「こはぜ」を外しひもで結ぶシューズ型を開発する。金栗は五輪で雪辱を果たせなかったが、36年ベルリン大会で朝鮮出身の孫基禎(ソンギジョン)が「金栗足袋」をはいて金メダルを獲得した

   ◆

先日行われたシカゴマラソン。日本新記録で3位の大迫傑(すぐる)選手(佐久長聖高―早大出)をはじめ、上位の多くは同じオレンジ色のシューズをはいていた。ナイキが開発した「厚底」が特徴のシリーズだ。靴底は最も厚い部分で4センチ。航空宇宙産業で使う丈夫で軽い素材を使った

   ◆

「マラソンシューズは薄底」との常識を覆した。反発力があるカーボンファイバーの板を底に挟み込みクッション性と推進力を兼ね備えた。今年の箱根駅伝でも多くの選手がはいた。ただし使いこなすには走り方を変え筋力を鍛えることが必要な選手も

   ◆

靴に人間が合わせる時代なのか。もっとも現代にも「職人」はいる。高橋尚子さんらの靴を作り現代の名工に選ばれた三村仁司さんだ。靴底などを選手に合わせミリ単位で調整するその人がスポーツメーカーと専属契約を結んだ。東京五輪まで2年。靴の戦いも筋書きのないドラマである。

(10月11日)

最近の斜面