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英語民間試験 なぜ立ち止まらないのか

 英語の民間試験を大学入試の共通テストに導入することについて大学や高校から幅広く合意が得られているとは言いがたい。むしろ、導入が近づくとともに不安や戸惑いは増している。

 入試で最も肝要な公平さが確保できるのか。危ぶむ声は強い。いったん立ち止まり、丁寧に検証し直す必要がある。文部科学省は、2020年度の導入日程ありきで押し切るべきではない。

 東京大は先月、受験生に民間試験の成績提出を必ずしも求めない方針を決めた。一定水準の英語力があることを高校が認め、調査書に記入すれば出願できる。

 事実上、民間試験は使わないという判断である。ここへ至るまでに方針は揺れた。いったんは活用する方向に転じ、学内から異論が相次いだ経緯がある。

 国立大学協会は民間試験の活用を申し合わせ、成績の扱い方について指針や具体例を示している。ただ、最終的な判断は各大学に委ねられ、まだ明確な方針を出せていないところが多い。

 現在のセンター試験を共通テストに移行するにあたり、「読む・聞く」に加え「話す・書く」力を評価することが導入の目的だという。TOEFL、英検をはじめ8種類を文科省が既に認定した。

 何より心配なのは、住む地域や家庭の経済状況によって、有利、不利の差が生じることだ。試験によっては大都市でしか受験できない。交通費の負担に加え、受験料が2万円を超す試験もある。

 高校の授業が民間試験の対策に偏り、英語教育を変質させかねないと懸念する声も出ている。民間試験は高校3年の4月から受験できるため、学校行事を含め高校の教育全体に関わってもくる。

 また、それぞれ目的も尺度も異なる民間試験の結果を一律に比較するのは難しい。語学力の国際基準に当てはめるというが、それに用いる対照表は、公式な検証、審査を経たものではない。

 新たな入試制度は、公正、公平の面から根本的な疑問が山積している。どう解消するか、具体的な措置が示されたわけではなく、納得がいく説明もない。

 本来、入試の改革は大学が主体となって進めるべきものだ。共通テストで足りない部分は個別の2次試験で補えばいい。文科省がごり押しするのは無理がある。

 大学入試は受験生の進路の選択に大きく影響する。20年度という年限は絶対の前提ではない。公平さに疑義を残したまま見切り発車することがあってはならない。

(10月12日)

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