長野県のニュース

入管法改正案 拙速審議は禍根を残す

 安倍晋三首相の所信表明演説に対する代表質問が始まった。今国会の焦点は、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案である。

 首相は「深刻な人手不足に対応するため、即戦力となる人材を期限付きで受け入れる」と述べ、移民政策を採ることは考えていないと強調した。

 そうだろうか。改正案は高度な専門人材に限っていた外国人労働者の受け入れ政策の大転換だ。

 一定の技能を要する業務に就く「特定技能1号」と、熟練の技能を要する「特定技能2号」の二つの在留資格を設ける。2号は永住にも道を開く。単純労働に就く移民の受け入れにつながる問題だ。

 外国人労働者は昨年10月末で過去最高の約127万9千人に上っている。4割はアルバイトや技能の修得を名目とした技能実習生だ。政府は新資格で数十万人単位での受け入れを見込む。永住希望の外国人も出てくるだろう。

 外国人が安心して働き、生活できる環境づくりが問われる。それなのに改正案には不備が多い。

 外国人を受け入れる企業や事業主は、日本人と同等以上の報酬などの「適正な雇用契約」を結ぶことが義務付けられる。1号では支援計画の策定も必要だ。

 これらは法務省入国管理局を改組して新設する出入国在留管理庁が監督、指導する。

 技能実習制度では、違法な長時間労働や賃金不払いが相次いでいる。現在の問題が解決できないのに適切に機能するのか疑問だ。

 新資格の対象となる業種や受け入れ規模も決まっていない。1号では家族の帯同も認められない。期間は最長5年になる。働く環境として適切とはいえないだろう。外国人労働者を支援する登録支援機関も担い手が未定だ。

 議論し検証するべきことは多い。それなのに政府は人手不足に早急に対応するとして、来年4月の制度開始を目指している。あまりに拙速である。

 審議に臨む与党の姿勢も問題だ。本会議や委員会での審議に首相出席を求める「重要広範議案」に指定していない。外遊を理由にしている。これでは十分な審議はできない。

 外国人との共生に向けた社会のあり方が問われる問題だ。このままでは将来に禍根を残す。政府は問題の重大さをごまかさず、改正案のメリットとデメリットを明らかにして、真摯(しんし)な態度で論戦するべきだ。国民的な議論を経て、方向性を決める問題である。

(10月30日)

最近の社説