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優生手術 国の責任曖昧にするな

 旧優生保護法の下、障害者らに不妊手術を強いた重大な人権侵害について、国の責任を明確にし、一人でも多くの被害者への補償、救済を図る―。被害回復の根幹に据えるべきことが、なおざりになってはいないか。

 議員立法による解決に向けて、自民、公明両党の合同作業部会がまとめた法案の骨子である。手術の記録が残っていない人や、形式上は同意していた人も対象とし、一律の一時金を支給する。

 与野党の議員連盟もほぼ同じ方針だという。一本化して来年の国会に法案を提出する方向だ。司法の判断を待たずに国会が動き、補償、救済が具体化に向けて前進したことは評価したい。

 ただ、旧法の違憲性は認めず、国が被害回復を怠ってきた責任にも触れていない。「深く反省し、おわびする」ことを明記するとしたものの、謝罪する主体は誰なのかを示さなかった。

 さらにうなずけないのは、個人名が分かっていても本人に通知しないことだ。意思表示が難しい人や、手術をされた認識がない人もいることを踏まえれば、自己申告を前提に被害者を置き去りにするような対応はすべきでない。

 周囲に知られたくない人に配慮することは必要だが、伝える方法を工夫する余地はある。時間がたって現住所が分からないことも理由にならない。

 個人名が分かる記録は自治体や医療機関などにおよそ4600人分あることが分かっている。それを役立てないとすれば、被害の実態を掘り起こす努力が無に帰すことにもなりかねない。

 記録がない被害者については、厚生労働省内に審査会を設け、手術痕などに基づいて認定する仕組みをつくるという。ただ、政府はこれまで、「当時は適法だった」として謝罪や補償を拒む、かたくなな態度を取り続けてきた。

 「公害の被害認定を原因企業に任せるようなもの」といった不信が向けられるのはもっともだ。認定機関は、行政から独立した形で設けるのが望ましい。

 戦後40年以上にわたって手術は続き、障害者の尊厳と人権は踏みにじられた。旧法はもともと国会で全会一致で成立した議員立法である。政府は、だますことさえ認めて手術件数を増やすよう促し、優生政策を推進した。

 政府、国会の責任は重い。そのことを曖昧にしたまま、形だけの救済で終わらすことがあってはならない。与党合同部会、議員連盟は法案を練り直すべきである。

(11月2日)

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