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米中間選挙 民主制取り戻す一歩に

 民主党が8年ぶりに下院を奪還した。

 米大統領の任期半ばに実施する中間選挙で定数100の上院のうち35議席と、435の下院の全議席が争われた。上院は改選前に続き、与党共和党が過半数を維持した。

 大統領を支持するか否か―で、社会を二分した選挙だった。感情ではなく政策の是非で評価する民主政治本来の姿を取り戻さなくてはならない。人種や性別、宗教を問わず、国民の権利を守る立場にある重責を、トランプ氏は再認識してほしい。

 トランプ氏は女性や移民、性的少数者(LGBT)、イスラム教徒への差別的言動を繰り返してきた。応援演説も、移民排除をはじめ、自身の政策に賛同する保守層への呼びかけに偏った。

 憎悪を誘発し、分断をあおる姿勢への批判票を、過去最多の女性とLGBTを候補に擁立した民主党が取り込んだ格好だ。

 米大統領選への介入を巡るトランプ陣営とロシアの共謀、司法妨害、巨額脱税など、大統領には数々の疑惑が付きまとう。

 民主党が過半数を握ったことで下院による調査が進むと見込まれる。共和党に阻まれてきた召喚令状を使い、証人に証言や証拠の提出を命じられるようになる。「米国第一」をうたう政策推進の足かせになりそうだ。

 民主党では今回、社会保障制度の充実を掲げた急進左派の若手も台頭し、選挙区が狭い下院選では都市とその近郊を中心に有利に展開した。ただ、州全域で争う上院選は巻き返せなかった。

 同じく州単位で決する2年後の大統領選に備え、政策面の対抗軸を明確にし、現行政治に不満を抱く中間層や保守層にも訴えかけることが欠かせない。高齢化した党指導部の世代交代の必要性、トランプ氏に肩を並べる「党の顔」の不在も指摘されている。

 開票途中の取材に、ホワイトハウスの報道官は「大統領の方針は変わらない」と述べた。

 他国との条約や合意、協定を次々に破棄する外交は同盟国との信頼関係を損ね、国際社会での米国の孤立を際立たせている。中国や欧州連合との通商摩擦は、自動車産業の労働者や大規模農家に打撃を与え、共和党離れを招く大きな要因になった。

 米国の権益を振りかざし、多国間協調に背を向ければ、安全保障面でも経済面でも不利益となって跳ね返る。野党の意見を入れ、国内外の政策を軌道修正する柔軟さが、トランプ氏に求められる。

(11月8日)

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