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ヒトラーはナチスの思想に反する本およそ1億冊を焼き払った。対する米国は戦地の兵士に本を供給する運動を展開した。全米の図書館員が寄付された本を送り、出版業界はポケット版の「兵隊文庫」を新たに発刊し戦地に届け続けた

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第2次世界大戦のさなかである。名作、娯楽、実用、戦争の悲惨さを伝える戦記まで、その数1億4千万冊。兵士を癒やしたのはもちろん「自由を守る」士気を高めた。活動を担った出版業界の戦時図書審議会は国内の「検閲」とも戦って勝利している

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政治色がある本などを制限する法案が成立した。作家E・B・ホワイトのエッセー集も文庫では出版禁止に。審議会は猛反発し世論の支持を受け制限を撤廃させた。「民主主義を実践した」と審議会理事が語っている。モリー・グプティル・マニング著「戦地の図書館」に詳しい

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引いたのは、米中間選挙で1票を投じた70代の女性の言葉が目に留まったからだ。「孫の世代も民主主義が続くのか決める重要な選挙です」。結果は下院で民主党が勝利し、先住民やムスリムの女性が当選している。女性や少数派の声が届いたのだろう

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民主主義とは何か。ホワイトは例えの一つに「投票所でのプライバシー、図書館での共有やあらゆる場所での生命の感覚」を挙げた。個人の尊厳が損なわれ社会が分断されたまま土台が崩れていく。そんな姿は日本にも他山の石だ。選挙が民主主義を再考する機会になったなら光も見える。

(11月8日)

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