長野県のニュース

iPS再生医療 慎重に安全性の検証を

 人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使う再生医療の臨床研究が広がっている。

 京都大はiPS細胞から神経組織を作り、パーキンソン病患者の脳内に移植する治験を開始した。血液成分の一つである血小板を作って、難病貧血患者へ輸血する臨床研究も実施する。

 大阪大は心筋細胞に変化させて加工したシートを、重症心不全患者の心臓に移植する予定だ。

 計画通りに進み実用化されると、難病に苦しむ患者にとって光明になる。治療を待ち望みながら闘病している人も多いだろう。

 ただし、iPS細胞による再生治療は一般的にがん化のリスクが指摘されている。思わぬ増殖が起きていないか、長時間にわたって見守る必要がある。拙速に進めては再生医療全体への信頼性にも影響する。慎重に安全性を見極めなければならない。

 iPS細胞は、皮膚などの細胞に人工的に遺伝子を入れるなどして、さまざまな細胞に変化できる能力を持たせた。けがや病気で失った組織や臓器を修復する再生医療に有用とされている。

 山中伸弥・京大教授が2006年にマウスで、07年に人で作製を報告して、12年にノーベル医学生理学賞を受賞している。

 京大が脳内に移植する治験を始めたパーキンソン病は、脳内で情報を伝える物質を出す神経細胞が減り、手足が震えたり、体がこわばったりする。国内の患者は約16万人と推定されている。

 今回は拒絶反応が起きにくいiPS細胞から神経細胞を作って脳に注入し、本来の神経細胞の働きを補う。

 対象患者は薬物治療で十分な効き目がない50〜60代の7人。細胞が脳に定着しているか、異常に増殖していないかなど、2年以上かけて安全性を評価していく。

 京大は「薬を飲む必要がないくらい症状が改善されること」を目指している。有害なタンパク質がたまって神経が死んでいく病気の原因を解決するわけではない。それでも根本的な治療方法がない現状を大きく改善する。

 順調に進んでも実用化までは時間がかかる。国の承認を得て治療が始まっても、公的医療保険が適用されるのは、さらに数年後だ。

 iPS細胞による再生医療はまだ広がるだろう。安全性と有効性が実証できるのなら、患者が収入状況にかかわらず、治療を受けられる体制をつくることが必要になる。保険適用を目指して、取り組んでほしい。

(11月13日)

最近の社説