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和紙24枚つづりの文書は風呂敷に包まれ、竹で編んだ箱に入っていた。冒頭に「日本帝国憲法」と記してある。50年前の夏、東京都西部の五日市町(現あきる野市)で山林地主だった深沢家の土蔵から見つかった明治初期の憲法草案だ

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1881年、千葉卓三郎が中心になって起草した。千葉は仙台藩の下級武士の家に生まれ戊辰(ぼしん)戦争で敗走。医学や儒学などを学びつつ、各地を放浪して求道(ぐどう)生活を続けた。五日市町で深沢家に迎えられ学校の教師を務めながら自由民権運動に身を投じた

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204条から成る憲法草案は地元の青年民権家らと論議を重ねて完成させた。統治は天皇が強大な権力を持つ仕組みを規定しているが、国民の権利は言論や思想、信教の自由、政治参加などを盛り込んだ。ギリシャ正教の布教で投獄経験がある千葉の人権擁護の姿勢が表れている

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各地で起草された私擬憲法の一つだ。草の根の人々にたぎっていた自由民権への願いが伝わる。五日市郷土館が16日まで企画展を開いている。ひるがえって自民党の改憲4項目はどうか。自衛隊明記は安倍晋三首相が昨年の憲法記念日に突然言い出した

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いわば私案が論議も生煮えのまま党の条文案になり今国会で提示を目指した。首相は東京五輪の2020年に実現し国の未来を切り開くと大見えを切ったが自由民権家ほどの進取の精神がどこにあるのか。国民の理解も広がっていない。「宿願」を遂げたいだけなら神棚に飾るのが一番だ。

(12月6日)

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