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仏反政府デモ 「金持ち優遇」に強い異議

 フランス各地に広がった反政府デモが収まる気配を見せない。新自由主義的な構造改革を推し進めてきたマクロン政権が窮地に立たされている。

 ドイツのメルケル首相が任期限りでの引退を表明し、英国が欧州連合(EU)から離脱する期日が迫る。フランスでも政権が支持を失って、欧州の結束がさらに揺らがないか、心配になる。

 直接の引き金は、燃料税の引き上げだ。政府は環境政策の一環として段階的な増税を打ち出し、ガソリン税と軽油税を、今年に続いて来年初めからもう一段引き上げることを決めていた。

 燃料価格が高騰している上、公共交通が乏しい郊外や地方の住民が大きな打撃を被るとして、大規模な抗議デモが11月に起き、その後も週末に各地で続く。政党や労組が主体ではなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で参加者が広がった。

 先週末は全国で13万人余が参加し、治安部隊との衝突などで700人近くが拘束されている。パリでは、一部の参加者が暴徒化し、車への放火や商店の破壊、略奪が相次ぐ事態にもなった。

 マクロン政権は、増税は撤回しないとしていた姿勢を転じ、6カ月先延ばしすることを表明した。けれども、それでデモが沈静化するとは考えにくい。

 市民の抗議は、燃料税だけでなく、マクロン大統領が昨年5月の就任以来進めてきた政策全般に向けられている。異論を入れない政治姿勢を含め、積み重なった不満がせきを切った形だ。

 政策の柱は、企業活動の規制緩和と行財政改革である。企業が払う罰金に上限を設けて従業員を解雇しやすくする労働法改定や、法人税の減税を次々と実行してきた。一方で、社会保障費に充てる増税を行い、公務員の大幅な削減を打ち出してもいる。

 「金持ち優遇」との受けとめが広がり、就任当初に6割を超えた支持率は2割台に落ち込んだ。暴徒化した過激な行動への批判はあっても、デモ自体は国民の7割以上が支持している。

 マクロン氏は大統領選で、既成政党や左右の対立軸からの脱却を掲げて清新さを打ち出し、支持を集めた。デモの拡大は、期待と懸け離れていく政治への広範な異議申し立てである。

 人々の声に向き合い、政策と政権運営のあり方を見直さなければ、政権の行きづまりは避けられないだろう。欧州の統合をけん引する責任も果たせない。

(12月6日)

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