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快適な飼育環境、家畜への影響は 八ケ岳中央農業実践大学校が実証実験へ

八ケ岳中央農業実践大学校で飼育する乳用牛。飼育環境の違いでどんな変化が表れるか調べる八ケ岳中央農業実践大学校で飼育する乳用牛。飼育環境の違いでどんな変化が表れるか調べる
 諏訪郡原村の八ケ岳中央農業実践大学校は2019年度、家畜にとって快適な飼育環境に配慮する「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の実証実験に乗り出す。小屋飼い、放牧といった飼育環境の違いが、家畜の健康状態、畜産物の量や栄養価などにどう影響するかを調査。アニマルウェルフェアと生産性の向上を両立できる適切な飼育方法の確立を目指す。

 アニマルウェルフェアは、良質な餌や水、十分な飼育スペースなどに配慮し、家畜にとっての快適さを実現する欧州発祥の考え方。食肉需要の増加に対応するため、飼育環境を十分に考慮せず大量生産することへの疑問から提唱された。家畜のストレスや病気の減少、畜産物の品質向上につながるとされる。

 農林水産省は09年以降、肉用牛やブロイラーといった家畜ごとに飼養管理の指針を順次作ってきた。日本も加盟する国際機関「国際獣疫事務局」(OIE)がその後示した指針も踏まえて改定。必要な栄養を含んだ飼料や新鮮な水を与え、畜舎はけがをしにくい構造にして十分な明るさを確保、去勢する場合には過度なストレスの防止に努める―といった対応を盛った。

 20年東京五輪・パラリンピックを控え、選手村などで提供する食材の調達基準として、家畜の快適性に配慮した飼養管理が求められていることもあり、農水省は畜産関係者らに対応を促している。

 ただ、同校の清水矩宏(のりひろ)校長は「畜産物の品質向上などにつながるか、科学的な根拠がほとんどない」と指摘。改めて検証する必要があるとし、実証実験に乗り出すことにした。乳用牛と採卵鶏のほか、19年度に同校が飼育を始める豚で実験する計画だ。

 乳用牛と豚は小屋飼いと放牧に分け、乳や肉の量と質、気象条件によって生じるストレスの変化などを比較する。小型機器を装着し、睡眠時間や移動距離なども把握する。

 清水校長によると、一般に放牧は餌代などの削減や家畜のストレス解消などの利点があるとされるが、乳牛は搾乳量や乳成分が低下するとの指摘がある。実験ではこうした点を検証し、「高い生産性と動物福祉を両立するための参考にする」という。

 また採卵鶏は狭い籠に2羽ずつ入れる「ケージ飼い」と、鶏舎内に多数を放す「平飼い」に分けて違いを把握する。

 清水校長は、戦後日本の畜産は生産量が重視されてきたが、近年は食の安全や動物福祉の向上が注目されるようになったとし、「未来の酪農を担う学生のためにも、時代に合った飼育方法を確立したい」と話している。

(1月5日)

長野県のニュース(1月5日)