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TPP発効 負の側面絶えず検証を

 日本を含む11カ国の環太平洋連携協定(TPP)が発効した。

 域内人口が5億人を超す自由貿易圏の誕生である。将来的に域内の農産物や工業品の95%超の品目で関税を撤廃する。

 日本にとって自動車など工業分野の輸出に追い風となるほか、輸入食品の値下がりも期待できる。半面、海外の安い農産物の流入が国内農業には試練となる。

 米国と中国が追加関税の応酬を繰り返し、世界経済に保護主義拡大の混乱が広がるなか、対抗軸となる可能性がある。

 忘れてならないのは負の側面である。TPPを巡っては、そもそも参加すべきかどうか国民の間で意見が分かれていた。地域農業の衰退に伴う農村の空洞化や、食料安全保障の弱体化が加速する懸念は、いまも拭えていない。

 政府は明るい側面を強調している。貿易立国の日本が経済連携に力を入れるのは当然としても、悪影響を絶えず検証し必要な政策を打ち出していかねばならない。

 TPPはニュージーランドやチリなど4カ国の貿易協定を基に、当時のオバマ米政権の呼び掛けで参加国が急拡大した。日本は2013年に交渉入りした。

 米国を含む12カ国でいったん合意したが、米国がトランプ大統領就任後の17年に離脱した。

 貿易の自由化は世界経済の成長に寄与する一方、日本の農業のように比較的不利な条件を抱えた産業が衰退するリスクを伴う。各国の状況に配慮しながら多国間交渉で妥協点を探るのが基本だ。

 トランプ政権は力を背景に自国有利の条件を狙って2国間交渉を重視。日米交渉が3月にも始まる。農業の状況を考えるとTPP以上の自由化は受け入れがたい。

 政府が17年にまとめたTPPの影響試算は、農林水産物の生産額が最大約1500億円減少するとした。だがこれは、農家所得や生産量が維持されるとの前提を置いている。現実的でない。

 例えば、安い乳製品の流入で酪農が縮小すれば、稲わらを牛に与え堆肥を水田に利用する循環型農業が打撃を受ける。農村の高齢化なども含めると、衰退は連鎖的に広がるとみるべきだろう。

 国はこれまで、TPP対策で1兆円近い予算を計上。18年度第2次補正でも3千億円規模を投じる予定だ。これらの対策は競争力の強化が主眼となっている。

 TPPのほか、2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効する。現場目線で影響を見定めていく必要がある。

(1月5日)

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