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勤労統計偽装 国の信用にも直結する

 一つの統計の誤りとして見過ごすことはできない。

 賃金や労働時間の動向を対象にした厚生労働省の毎月勤労統計調査である。全数調査が必要なのに一部を調べないで公表していた。

 不適切な調査は2004年から続いており、全数調査に近づけるために統計上の細工もしていたことが分かっている。

 勤労統計は「月例経済報告」や「経済財政白書」といった政府の経済分析で、労働経済の情勢を示す指標として使われる。国の「基幹統計」だ。間違いがあると国際的な信用にもかかわる。偽装など言語道断である。

 厚労省が毎月、都道府県を通じて調査する。従業員5人以上の事業所が対象で、500人以上は全てを調べることになっている。

 それなのに、東京都内では約1400ある対象のうち、3分の1程度しか調べていなかった。賃金が比較的高いとされる大企業が少なく、金額が実態を下回った可能性がある。

 労働者が労災に遭ったときに支給される休業補償や、失業給付の金額は、勤労統計の給与額などの変動によって見直される。正しい手法で調査した結果、平均給与額が高くなれば、これらが過少に給付されていたことになる。

 最低賃金の改定議論でも参照され、国際労働機関(ILO)などにも定期的に報告されている。影響は大きい。

 厚労省には問題に対する危機感が感じられない。

 根本匠厚労相は昨年12月20日に、調査に問題があるとの報告を受けたのに、21日に昨年10月分の確報値を発表している。きのうは全数調査に是正しないまま11月分の速報値を公表した。厚労省は「規則で発表することが決まっているため」と説明している。

 調査の重要性を考えると、データを是正するまで発表を控えるのが筋ではないか。

 早急に原因を解明することが必要だ。調査した東京都は「厚労省から示された名簿に記載された事業所は全て調べた」としている。厚労省が名簿を作成した時点でミスが起きていた可能性がある。

 ミスが長年にわたって放置された理由も詳細に突き止める必要がある。その上で責任の所在を明らかにするべきだ。給付額などが過少だったなら、是正して不足分を再支給することも必要だろう。

 厚労省は昨年の通常国会で労働時間調査の不適切データ問題も発覚している。病巣は深刻である。

(1月10日)

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