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伊能忠敬の歩幅は約69センチだったそうだ。江戸後期の測量家である。その足で17年間、9次にわたって日本全土を歩き実測地図を作った。中山道の木曽路に入ったのは1809年のこと。九州をゴールにした第7次測量の旅の往路だった

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「伊能図大全」(河出書房新社)に収録されている木曽路の手書き地図を見た。縮尺3万6千分の1。木曽川に沿って中山道の道筋が赤い線で引かれている。上松の宿駅は赤い線の丸。寝覚の床や小野の滝など名所も記してある。谷の両側の山々は緑だ

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忠敬の地図は測量せずに描かれていたそれまでの絵図とは大きく異なる。道の長さや方位を実測し縮図にした。誤差が小さく当時としては驚くべき高精度だった。忠敬の死後、門弟たちが全土の地図を完成させ、1821年幕府に提出した。「大日本沿海輿地全図」(伊能図)だ

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上松町観光協会が山中に埋もれていた旧中山道のルートを見つけた。南北およそ500メートルの区間。伊能図に描かれた中山道の道筋とぴたり一致したというから間違いあるまい。これで町内の旧中山道はほぼ明らかに。外国人の誘客に結び付けたいそうだ

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民俗・日本思想史家の田中欣一さん(白馬村)によれば信州は全国で一番、古道が残されている。特に木曽路は石仏など路傍にたたずむ文化遺産が豊かという。伊能図は明治に入っても活用され約100年間命脈を保った。古道を再発見して生かすのも、忠敬のように息長く取り組みたい。

(1月10日)

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