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北の非核化 行程示し機運の維持を

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が中国を訪問した。

 非核化を巡る米朝交渉が膠着(こうちゃく)する中、中国との蜜月ぶりを誇示し米政権をけん制する狙いがあるとされる。招請した習近平国家主席にも、覇権を争う米国に存在感を示したい思惑があったと受け取れる。

 トランプ米大統領は、金氏との再会談について「遠くない将来に公表できる」と述べている。米朝の主張が食い違ったままの状況を首脳同士の話し合いで打開できるのだろうか。

 昨年6月の初会談では北朝鮮の「完全な非核化」で合意した。その後、非核化の具体的措置の先行を求める米国と、体制保証や経済制裁緩和との同時行動を訴える北朝鮮が互いに譲らず、交渉は難航している。

 文在寅韓国大統領との昨年9月の会談で金氏は、ミサイルの実験場と発射台、プルトニウムやウラン施設の廃棄を約束した。核実験と長距離ミサイルの発射実験の中止も決めるなど、非核化の意思を「小出し」にしてきた。

 一方、11月には1年ぶりに軍事実験を視察。核ミサイルの製造と配備を続けている、との米側の分析もある。まずは米国が朝鮮戦争の終戦宣言に同意するよう、硬軟両面で揺さぶっている。

 米政権は応じない。

 一時は終戦宣言に踏み切るとの見方が浮上したものの、政権内の力関係が変わり、トランプ氏の姿勢は「完全非核化は全く急いでいない」に転じた。

 米下院の過半数を野党民主党が握り、北朝鮮との曖昧な合意を認めない圧力も増す。政権は、完全非核化まで制裁を維持するかたくなな姿勢を崩していない。

 金氏は新年の辞で、これ以上は核を造らず、実験も使用も拡散もしないと宣言、また一歩「譲歩」して見せた。ただ、保有する核兵器には触れず、米国が制裁圧力を維持するのなら方針の再転換もあり得ると強調した。

 状況は昨年の米朝会談前に戻ったようにさえ映る。

 交渉を絶たない双方の姿勢は評価できても、次の会談で、国際社会が納得する具体的な目標と行程を打ち出せなければ、非核化の機運がしぼみかねない。

 米国との2国間協議にこだわってきた金氏は新年の辞で、多国間協議の必要に初めて言及した。米国と中国、韓国を指しての発言だが、南北共同宣言や米朝共同声明を土台に、日ロを含む6カ国協議再開の可能性も探りたい。

(1月10日)

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