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いくつもの盆地から成る信州の良さは各地に特色ある文化が育ったことだ。地元の土を使う陶芸もその一つ。必要な雑器は自前で賄わざるを得なかった。今ではほとんど絶えてしまったが、その魅力を再発見し復活に取り組む所もある

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江戸末期から大正初めまで大きな陶器を生産して脚光を浴びた塩尻市洗馬。適した土があったため渡り職人が定着し富を築いた窯元もいた。しかし鉄道輸送の発達とともに衰えた。先ごろ洗馬焼保存会が発行した写真集「塩尻市の焼き物」に教えられた

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写真集は保存会長の寺沢順三さんが集めた作品を中心に50点を収録する。若くしてとりこになった寺沢さんは60年以上も収集を続けた。散逸しないようにと大半を公共施設に寄贈している。やがて農道工事で見つかった登り窯跡の発掘をきっかけに関心が高まり、保存会ができた

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洗馬焼の実用的な美しさは評価が高い。編集した小林研一さんによると、その特長は滋賀・信楽から招かれ技術向上に貢献した奥田信斎のかめや火鉢など大型陶器に見られる。力士でもあった信斎の豪快さが表れている。小林さんは復活にも一役買った

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40年近く前、赴任した塩尻西部中のクラブ活動で、生徒たちと土の採取場所などを聞き取り調査し、文化祭で洗馬焼の作品を発表した。今も地元の作陶教室で講師を務め土鍋や陶板を作っている。陶芸に親しむ人が増えているという。掘り起こされた地域文化がどう花開くのか、楽しみだ。

(2月10日)

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