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官邸の質問制限 「知る権利」を侵害する

 首相、官房長官、各省の大臣ら、政府の中枢にいる政治家が会見で記者の質問に答える理由は何だろう。

 それは、憲法が国民に保障する「知る権利」を実現する役割をメディアが担っているからだ。

 記者会見は政治家が国民に対する説明責任を果たす場でもある。会見に応じなかったり質問を制約したりするのは、憲法に照らして望ましくない。

 そう考えると、今度の問題のポイントが見えてくる。首相官邸が昨年12月、官邸の記者クラブに対し、特定の記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」と断定して、「問題意識の共有」と正確な質問をするよう文書で申し入れた件である。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る質問である。東京新聞の記者が、埋め立てに使っている土砂に赤土が混じっていると指摘して「政府としてどう対処するか」と問いただした。

 赤土が混じるとサンゴを死滅させる原因になる。環境破壊につながりかねない。工事はバリケードの内側で行われ、記者は現場に近づくことができない。そうした中での質問である。

 質問内容が事実誤認に基づくなら、官邸はその旨を指摘して正しい情報を開示すればいいだけの話だ。「問題意識の共有」を求めるのは筋違いである。

 新聞、通信社の労組でつくる日本新聞労働組合連合(新聞労連)はこの問題で抗議声明を出している。それによると、官房長官会見では記者が質問しているときに司会役の報道室長が「簡潔にお願いします」などと数秒おきに述べ、妨害しているという。

 声明は「意に沿わぬ記者を排除するのは国民の知る権利を狭める」と指摘。質問制限が「悪(あ)しき前例として日本各地に広まることを危惧する」と述べる。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)も「報道規制を図ろうとしたもので、民主主義社会では許されない」との声明を発表した。

 官邸が質問を「事実誤認」とする根拠にも疑問がある。土砂に赤土が混じっていることは上空のヘリ取材などからも推測できる。沖縄県は赤土混入で環境が悪化する可能性が高いとして、沖縄防衛局に調査するよう求めている。同局は応じていない。

 居丈高に「事実誤認」と攻撃する政府の姿勢は、辺野古の問題で報道機関全体を威圧し、萎縮させることを狙っていると受け取られても仕方ない。

(2月18日)

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