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原発事故裁判 国民が納得できる判決を

 東京電力福島第1原発事故を招いた刑事責任を問う裁判が東京地裁で結審した。

 元会長と元副社長2人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された。

 甚大な被害が出て、事故から8年が経過しても4万人以上が住み慣れた地域に戻れない。廃炉の見通しも立っていない。過去最悪の事故である。原因と責任の所在を明確にしなければならない。

 被告の3人は「事故の予見可能性はなかった」と無罪を主張している。裁判所は提出された証拠や証言を詳細に検証し、国民が納得できる判決を出してほしい。

 主な争点は二つだ。

 一つは巨大津波の襲来を予想できたのか。もう一つは事故を回避することができたのか、である。

 東電は2002年に国が公表した地震予測「長期評価」を基に、第1原発の敷地を高さ15・7メートルの大津波が襲うという想定結果を得ていた。この信頼性を巡り、検察官役の指定弁護士と被告で見解が分かれた。

 指定弁護士は論告で「長期評価は専門家が十分議論して統一見解を公表したもので信頼できる」と主張し、「安全対策を講じていれば事故を防げた」と述べている。

 一方、最終弁論で3人の弁護側は長期評価について「具体的な根拠は示されておらず、信頼性はなかった」と反論し、これを根拠にして津波を予見するのは不可能だったとしている。

 注目されたのは想定結果を被告らに伝えたとされる東電の地震対策センター元所長の供述調書だ。

 3人は当初、津波対策を実施する方向で了承していたのに、対策費が膨大になると判明すると「経営状況を理由に先送りした」などの供述が記されていた。元所長は体調を崩し、出廷していない。

 弁護側は調書について「勘違い」「具体性がない」などと信用性を否定している。

 主張の隔たりは大きい。難しい判断になるだろう。

 忘れてはならないのは、原発は事故を起こせば、国土と周辺住民に長期間にわたって大きな被害をもたらすことである。原発を運転する企業の経営者に求められる判断基準が問われる。

 被告らは検察の不起訴処分、検察審査会による起訴相当の議決を繰り返した末、強制起訴された。事故から初公判まで6年余かかっている。企業の事故で個人に刑罰を科す難しさが背景にある。

 責任を明確にするためには、業務上過失致死傷罪で組織を処罰する仕組みも検討するべきだ。

(3月14日)

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