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ほころび始めた梅の枝にこんもり積もった雪が昼ごろには解けていた。きのうの長野市街地だ。この春、見納めの「名残の雪」になるだろうか。別れが交錯する季節に口ずさむ歌がある。〓汽車を待つ君の横で僕は/時計を気にしてる

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伊勢正三さんが作詞作曲した「なごり雪」である。「かぐや姫」の一員だった1974年に作った第一作だ。イルカさんが歌って大ヒットし世代を問わず歌い継がれている。歌の舞台は東京だが、伊勢さんは故郷大分県の津久見駅から曲想を得たという

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駅のホームの思い出は高校や浪人生活の不安や切なさと重なる。恋をし別れる時の痛みも経験したそうだ。「なごり雪」の僕は「君が去ったホーム」に残り「落ちてはとける雪」を見る。映画シーンのような歌詞は、今も昔も変わらない青春の淡く苦い一ページを切り取っている

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16年ぶりに全12曲書き下ろしのオリジナルアルバムを発表した。67歳の挑戦だ。同世代の音楽評論家、富沢一誠さん(須坂市出身)は本紙の連載「時代が生んだ歌い手たち」でこのアルバムを紹介。前に進もうという元気と勇気を与えてくれると書いた

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イルカさんは2007年にプロデューサーで夫の神部和夫さんを亡くした。「なごり雪」のこの季節だ。著書「もうひとりのイルカ物語」は巡り合えたことに感謝する歌で締めくくった。素晴らしい出会いがあるから切ない別れがある。進学、就職の先にどんな出会いが待っているだろう。

(〓は、歌記号)

(3月15日)

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