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優生手術救済 被害者置き去りは駄目だ

 与野党が主導する形で動いたのはいいとしても、内容は不十分で被害者の納得は得られそうにない。確かな救済につなげるために、各党は法案を修正した上で国会に出すべきだ。

 旧優生保護法の下で障害者らに不妊手術が行われた問題で自民・公明の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派議員連盟が救済法案をまとめた。4月初旬に共同で国会に提出し、月内の成立、施行を目指すという。

 優生手術を巡っては全国の7地裁に計20人の被害者が国家賠償請求訴訟を起こしている。国の行為による被害の救済策は、判決が出てからまとめるのが普通のやり方だ。判決の前に与野党が立場を超えて法案取りまとめを進めたこと自体は評価できる。

 問題は中身だ。盛り込まれた救済策は腰が引けている。

 第一に、誰が被害者に謝罪するかの問題だ。法案には「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」とある。「われわれ」は誰なのか、はっきりしない。

 被害者はかねて国による謝罪を求めている。手術が議員立法に基づき行政主導で進められた経緯を踏まえれば、国の謝罪を求めるのはもっともだ。

 与党WT座長の田村憲久自民党政調会長代理は「『われわれ』の中には国会と政府が色濃く入っている」と言う。ならばはっきり「国と国会」と書くべきだ。

 第二に補償の金額だ。同様の手術を国民に対して行ったスウェーデンの例を参考に、320万円の一時金を支給する。

 スウェーデンの補償は20年ほど前のことだった。他国の過去の例を今に適用するのは無理がある。

 強制的に手術を施され、子どもを持てない体にされた苦しみは、金で償うことはできない。それでも、政府と国会の誠意を感じてもらえる金額にすることは必要だ。被害者は裁判で1千万円以上の賠償を求めている。

 法案にはほかに、▽旧法の違憲性に触れていない▽被害の認定機関が厚生労働省に置かれ、第三者機関になっていない▽5年の期限がある―といった問題がある。このまま法案の提出、採決と進むようでは、国会は被害者を改めて裏切ることになる。

 早ければ5月にも仙台地裁で最初の判決が出る見通しだ。判決が旧法の違憲性を認め、賠償でも被害者に応えることも考えられる。与野党は裁判の行方を見守りながら法案見直しを進めるべきだ。

(3月16日)

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