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特養の死亡事故 職員だけの責任なのか

 介護現場への影響が懸念される。

 安曇野市の特別養護老人ホームで、入居者がドーナツを食べた後に死亡した事故の判決公判が地裁松本支部であった。当時介護に当たっていて業務上過失致死罪に問われた准看護師の女性を有罪とした。

 どの施設でも起こり得る事故が職員個々の刑事罰につながれば、関係者は萎縮し、ただでさえ足りない介護の担い手の確保が一層困難になりかねない。

 事故が起きたのは2013年12月だった。85歳の女性入居者がドーナツを喉に詰まらせ、1カ月後に亡くなった。准看護師は他の入居者の食事も介助中で、異変に気付かなかった。

 裁判では主に(1)女性入居者の食事を注視する義務はあったか(2)事故前におやつの形態が固形からゼリー状に変更された事実確認を怠ったか―が争われた。

 裁判長は判決で、准看護師が同時に全介助が必要な入居者らの世話もしていたことから、女性への注意義務を怠ったとは言えない、とした。一方、引き継ぎ事項の変更は確認すべきだったと指摘し、(2)の過失を認定した。

 裁判を巡り、介護や医療に携わる全国の個人と団体が支援組織を結成、無罪判決を求める44万5千筆の署名を集めて松本支部に提出していた。公判のたび100人以上が傍聴の列をつくったのは、危機感の表れと受け取れる。

 介護職員の不足は深刻だ。2025年までに33万7千人増やさなければならないが、確保を見込む都道府県は一つもない。平均給与は月27万円余で、全産業平均に比べて10万円以上も低く、離職率も高止まりしている。

 厚生労働省は今月、全国の特養と老人保健施設で2017年度に事故により死亡した利用者が1547人いた、との調査結果を公表した。職員に責任がないとは言えないものの、直ちに刑事罰に問うことには疑問が募る。

 外国人を介護職に迎える時期でもある。施設の対策や人員体制は十分だったのか、自治体で第三者の調査機関を設け、警察や検察だけに委ねない検証の仕組みを整えてはどうだろう。

 判決の量刑は罰金20万円。裁判長は理由の中で、施設の連絡体制に不備があったとし、責任が「全て被告人にあるとは言い難い」と言い添えている。

 不十分な処遇のまま責任のみ重くなれば、高齢社会で最も切実な介護の受け皿は安定しない。国と自治体は対応を急いでほしい。

(3月26日)

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