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米のイラン政策 安定阻む挑発をやめよ

 米国とイランの対立は、互いに相手国の軍を「テロ組織」に指定するという異例の様相を呈している。

 トランプ米政権は一方的に核合意から離脱した後も、イランと敵対するイスラエルに露骨に肩入れし、挑発を繰り返してきた。イスラム諸国や欧州各国の同意も得られない独善的政策を続けたのでは、中東の安定は遠のくばかりだ。

 両国の不和は1979年のイラン革命に端を発する。イスラム勢力が親米の独裁王制を打倒。米国が国王を保護したことに反発した学生らが米大使館員を人質に取る事件が起き、国交を断った。

 オバマ前大統領が核合意を取り付け、経済制裁を解いたことで修復の兆しが見えた。が、トランプ大統領は合意から離脱、制裁も復活させ、逆戻りしている。

 イランにも非はある。シリアやレバノン、イエメンの内戦に深く関わり、核合意は守るものの、核弾頭を搭載できるミサイル実験を実施している。言論の自由を認めないなど人権問題も抱える。

 米政権はイランの「非道ぶり」を非難するけれど、その資格はあるだろうか。

 トランプ氏は2017年、国際社会が猛反発する中、エルサレムをイスラエルの首都と認めた。昨年、米在住のサウジアラビア人記者がトルコで殺害された際は、サウジ皇太子の関与が濃厚なのに不問に付した。先月は、イスラエルがシリアから奪った占領地ゴラン高原の主権を承認している。

 イラン封じ込めで共闘するイスラエルやサウジとの関係を重視しての判断だ。中東の安定を考えたのならまだしも、イスラエル偏重は自身の大統領再選のためとの見方がもっぱらだ。今回、イランの革命防衛隊をテロ組織に指定したのも、その一環とされる。

 米国が中東の安全保障問題を話し合う会議を主催しても、関係国は不信感から閣僚を派遣せず、米政権のイラン包囲の呼びかけにも応じていない。英仏独はイランと貿易を続けるための決済システムを設けており、中国とロシアも合意を維持している。

 トランプ政権は、核兵器を保有する北朝鮮には対話で臨み、クリミア半島を力ずくで併合したロシアには厳しい制裁を科している。自身の選挙や自国の権益だけを優先して外交方針を使い分けるのでは信を置けない。

 米政府は近く、中東和平仲介案を公表する。関係国が交渉の席に着く環境を整えない限り、どんな案を示しても効力は望めない。

(4月11日)

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