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WTO敗訴 懸念の払拭へ粘り強く

 世界貿易機関(WTO)が、福島や茨城など8県産の水産物に対する韓国の輸入禁止措置について、容認する最終判断を示した。

 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の影響を懸念する韓国が2013年から禁止し、日本は科学的根拠がないとしてWTOに提訴していた。

 日本が目指す食品輸出拡大への打撃は大きい。原発事故に起因する日本産食品の輸入規制は、韓国を含む23の国と地域が現在も継続している。他の規制国の対応に影響が出てくる恐れもある。

 政府は今後、2国間協議で韓国に禁止撤廃を求めていく方針だ。懸念の払拭(ふっしょく)に向け、これまで以上に丁寧な説明が必要になる。粘り強い対応を求めたい。

 WTOによる紛争処理の「二審」に当たる上級委員会の判断である。「一審」の紛争処理小委員会(パネル)は昨年、禁輸を「不当な差別」として是正を勧告し、韓国が上訴していた。今回で日本の逆転敗訴が決まった。

 上級委の判断内容は分かりにくい。放射線のレベルなど安全性に関する見解は示さずに、韓国の措置は「必要以上に貿易制限的」には当たらないなどとして、パネルの一審判断を破棄している。

 パネルの事実認定が揺らぐ審理状況ではないとみて、政府は勝訴を予想していた。どうしてこうなったのか。政府の対応は十分だったか。検証する必要がある。

 公正な貿易ルールの確保や紛争処理を担う国際機関であるWTOは近年、機能不全が指摘されている。ルール作りの多国間交渉は行き詰まり、自国第一主義で直接交渉を重視する米トランプ政権は脱退もほのめかしている。

 米政権は上級委についても、米国に不利な判断が多いとして委員人事を阻止。定員7人のうち4人が欠員という異例の事態になっている。今回の判断が機能不全の一端と決め付けることはできないが、政府は各国と協力してWTO改革を急がねばならない。

 福島第1原発には、今も汚染水がたまり続けている。放射性物質の影響への懸念は、国内においても完全に解消されたわけではない。情報公開を徹底し、処分方法の検討を十分な納得を得ながら進めることは、国内外を問わず世論の理解を得る大前提である。

 日本食品の禁輸を巡っては、中国が昨年以降、日中関係の改善を受け緩和に傾いた。禁止対象の10都県には長野県も含まれる。中国は輸出先としての存在感も大きい。きめ細かい対応が必要だ。

(4月13日)

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