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1型糖尿病 患者取り巻く困難に目を

 理由を示しもせず障害年金の支給を打ち切ったやり方は理不尽と言うほかない。国の処分を取り消した大阪地裁の判断は当然だ。

 大阪、奈良などに住む1型糖尿病の患者9人が起こしていた裁判である。地裁は判決で、支給停止は生活の安定を損ねる重大な不利益処分だと指摘。国の対応は、処分理由を明らかにすることを義務づけた行政手続法に違反すると断じた。

 1型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが体内で分泌されなくなる原因不明の自己免疫疾患だ。生活習慣が主な原因となる2型の糖尿病とは異なる。子どもの頃に発症することが多く、国内の患者は8万2千人に上るという。

 患者は一日に何度か注射などでインスリンを補い、血糖値を保つ必要がある。根治する治療法はまだないため、生涯にわたって続けなくてはならない。

 注射をしていれば、ほかの人と変わらず生活できる患者が多い。一方で、血糖値の管理が難しく、体調を崩しがちな人もいる。子どもの患者には医療費の助成制度があるが、成人にはないため、経済的な負担は小さくない。

 困窮して治療を続けられなくなれば命に関わる。障害年金は患者の生活を支え、生存権を保障する仕組みになってきた。原告たちは基礎年金として年間約80万〜100万円を受給していた。

 年金は障害の等級に応じて支給される。打ち切りは、それまで認定されていた障害2級に該当しなくなったとされたためだが、そう判断した理由は不明だ。

 認定の基準は不明確で、一方的な支給停止につながっているほか、受給自体を難しくしている。申請が認められなかったことを不当とする裁判も起きている。

 不利益を受けているのは大人だけではない。幼児の患者が幼稚園や保育所に入るのを拒まれた事例も報告されている。前例がないなどと門を閉ざされることも少なくないようだ。

 小学校でも、水泳の授業や、宿泊を伴う校外学習に参加できないといった制限を受けることがあるという。病気への認識が乏しい学校側が過剰な対応をして、子どもの意欲をそぎ、学ぶ権利を損ねていないか、心配になる。

 1型糖尿病という病気自体がまだ広く知られていない上、2型と混同した誤解も目立つ。患者はさまざまな困難に直面している。今回の裁判を、この病気に多くの人が目を向け、当事者をどう支えるかを考える契機にしたい。

(4月14日)

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