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低気圧の影響で春の雪に見舞われた数日前と打って変わり、穏やかに晴れた週末。遅れ気味だった県内の桜の開花も少しずつ進んだ。名所は家族連れらでにぎわい、やきもきしていた花見小屋もほっとひと息付いただろう

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待ちわびていたのは花見客だけではない。甘い香りを求めて桜の木に集まってくるのは、メジロやヒヨドリなどの野鳥たちである。細い枝に器用に止まっては小さな花に頭を突っ込む。蜜を吸い終わると、花から花へ飛び移る。いつの間にかくちばしは花粉で黄色く染まっていく

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桜の受粉に鳥が果たす役割は大きい。横や下向きに咲くことが多く蜜も奥にあるため、虫は蜜を吸い出しにくいのだそうだ。受粉で同じ種を残せないソメイヨシノも鳥には貴重な蜜の提供元だ。ただし、スズメは花を落とすため、桜には害になるらしい

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春の取り合わせは「梅に鶯{うぐいす}」が定番だ。俳句でも重視されていたが、正岡子規が「月並み」と批判し避けられるようになったという。本紙「けさの一句」筆者だった故村上護さんの解説で知った。梅もウグイスのさえずりより、受粉を助けるメジロを歓迎しているかもしれない

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厳しい冬を乗り越え一斉に咲き出した桜は人を和ませ、鳥に生きる力を与える。散るまでに蜜をたっぷりと補給した後は子育てに忙しくなる。最初はたどたどしかったウグイスの求愛の歌も本来の調子が戻ってきた。タンパク源になる虫も増える。野鳥の季節が信州に訪れる。

(4月14日)

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