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南海トラフ地震 予知頼みの意識変えねば

 南海トラフ巨大地震を直前に予知することの難しさが、改めて明確になった。

 地震学者へのアンケートで、平均して100回の巨大地震のうち99回は予知に失敗すると考えているとの集計結果が出た。

 政府も2017年から、予知を前提にした従来の政策を変更し、平常時より可能性が高まったことを示す臨時情報を発表する新たな手法を導入している。

 これまでより控えめな形で、直前の警戒を呼び掛ける形になっている。今回の結果からは、専門家が、即座に情報を出すことは難しく、出せても信用度は低いとみていることがうかがえる。

 市民や行政担当者は、巨大地震は基本的に突然襲ってくると考えておくべきだろう。これまで以上に、不意打ちを前提にした街づくりや防災対策に力を入れたい。

 アンケートは林能成関西大教授(地震学)が行い、日本地震学会の代議員ら90人が回答した。

 100回の巨大地震で予知を試みたとして、前兆現象があり、観測でき、危険性を判定し公表するという各段階をクリアして情報を出せるのは平均5、6回。うち当たるのは1回程度となった。

 政府は1970年代から、東海地震については予知可能だとして集中的な観測態勢を整え、発表する仕組みを構築した。その後、予知の難しさや、東海沖から九州沖にかけての南海トラフ全体の危険性に対する認識が広まり、約40年を経て政策が変更された。

 新手法の防災対策は、あいまいな臨時情報に自治体がどう対応するかに焦点が当たっている。

 政府は昨年末、南海トラフの東西どちらか半分で大地震が起きた「半割れケース」の場合、もう半分の領域でも後発地震が起きる恐れがあるとして、1週間程度の避難を呼び掛ける方針を示した。避難所の確保や実際には起きない「空振り」時の対応など、自治体からは戸惑いの声も聞かれる。

 南海トラフでは100〜200年の周期で大地震が発生しいる。現在は最後の大地震から約70年が過ぎた。政府による危険性の長期評価では「30年以内に70〜80%」の確率で起きるとされる。長い目で見ると確実に近づいている。

 臨時情報に備え、事前避難の課題を詰めるのは重要だ。だがそれだけで防災の実効性を高めることはできない。市民や行政に予知の難しさが正確に伝わっていないとの見方もある。予知に頼る発想から頭を切り替えることを大前提にしなくてはならない。

(5月23日)

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