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運動部の体罰 暴力と決別する意志を

 学校で運動部の指導者による暴力がなくならない。心身に傷を負い、命を落とす子までいる。心得違いの指導者をなぜ放置しているのか。暴力と決別する明確な意志が指導現場に必要だ。

 全国優勝経験のある兵庫の高校バレーボール部で4月、10回以上平手打ちされた生徒が鼓膜を損傷し、意識を一時失った。茨城でも卓球部顧問から「殺すぞ」などと暴言を浴び、女子中学生が自殺した。部活中の体罰は2017年度、全国の中学校で62件、高校で118件に上っている。

 社会問題となったのは、大阪市の高校バスケットボール部で体罰を受けた生徒の自殺が明らかになった13年。国は体罰禁止の徹底を通知し、高体連や日本オリンピック委員会なども「根絶宣言」を出した。指導ガイドラインも示されたが、今も根絶には程遠い。

 県内では12〜13年度、体罰をした公立校の計17人が懲戒処分された。県教委は教員らへの研修や講習を続け、処分数は減っている。それでも体罰はなくならない。

 昨年は高校バレーボール界をけん引してきた指導者が複数の部員への体罰を理由に私立高校を辞めた。今年も別の私立高校野球部で元プロ選手の監督の体罰が明らかになり、公立校でも3年ぶりに中学校の教諭が処分されている。

 暴力が繰り返されるのは、強豪校を中心に指導者らの意識や体質が変わらないからではないか。

 多くは選手時代に活躍したり、有力選手を育成したりした経験や自負がある。厳しさに耐えた自身の道のりを成功体験と思い、体罰を否定しきれないのだろう。自分の熱意に応えられない子に怒りを爆発させ、人格を否定する言動の裏に、勝利ばかりを追い求める偏った価値観を感じる。

 保護者の一部も「強くなるのなら」と容認していないか。指導者に「はい」としか言えない異様な環境で、心を守るために思考を止め、表情すら失ってしまう子もいる。主体性を尊重する指導でこそ力は伸びるはずだ。

 学校側の甘さも気になる。体罰を「行き過ぎた指導」と説明するケースがあるが、体罰は法律で禁じられ、指導ではない。違法行為をごまかしているに過ぎない。

 これから全国大会の予選が本格化する。27年の国民スポーツ大会(国体)県内開催に向け、選手強化も始まっている。競技力向上だけでなく、適切な指導で競技を続ける子を増やして裾野を広げないと、少子化で加入が減ってきた部活動の未来も危うくなる。

(5月25日)

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