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アスベスト対策 認識不足では済まない

 危険性に対する理解が不十分な現実を突きつけている。

 飯田市の保育園で、園児や職員がいる時間にアスベスト(石綿)が飛散する恐れのある工事が行われていたことが明らかになった。担当した業者が、保育園への説明や飛散防止対策を取る義務を怠っていた。

 園舎の天井板をはがす工事だった。担当の業者2社は、対策や説明を義務付けている大気汚染防止法の規定を知らなかった。

 保護者の指摘によって表面化している。建築は1976年。建物の鉄骨や天井板に石綿が盛んに吹き付けられた時期に当たる。工事の際、園内には園児約120人がいた。発注した園側も認識不足だったと言わざるを得ない。

 県はこの問題で、園と業者を行政指導した。県内の工事業者と保育施設を対象に、対策の徹底を呼び掛ける通知も出している。

 県によると、県内では2015〜17年に石綿関連の行政指導が31件あった。現場で徹底されていないのは明らかだ。単発の通知にとどまらず、継続的にチェックする仕組みを整える必要がある。

 石綿は安価で耐火性や断熱性があるため、高度成長期を通じて建材などに使われた。そうした古い建物の解体は、2020年から30年にかけてピークを迎える。

 解体業者は新規参入も多く、危険性を理解していない業者は珍しくないとの指摘もある。このままでは被害が拡大する懸念がある。

 石綿の被害は長く、工場などで粉じんに接する労働者の問題と見られてきた。05年に兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場で周辺住民の健康被害が発覚した「クボタショック」以降、一般住民への影響も注目されるようになった。

 園は、現時点で健康被害を訴えた園児らはいないとしている。そういう問題ではない。石綿は、吸い込むと数十年という長い潜伏期間を経て、がんの一種である中皮腫や肺がんになる恐れがある。

 発症すると数年で死に至るケースも多く「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。被害があった場合の補償方法を協議中という。長期的な対応が必要になるだろう。

 近年は、石綿の建材を使った公営住宅での被害が明らかになり入居者らの間で不安が広がった。分かっているのは氷山の一角で、多くの民間アパートや店舗に潜んでいるとの見方もある。

 行政や業者、建物の管理者の間に緩みはないか。石綿による被害の防止を、進行中の課題として改めて意識しなければならない。

(5月27日)

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