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英首相辞任表明 懸念募る「合意なき離脱」

 欧州連合(EU)離脱を巡り、英国の混迷は深まるばかりだ。

 メイ首相の辞任表明で情勢は一段と不透明になっている。「合意なき離脱」も現実味を増す心配な事態である。

 首相官邸前で演説し、新たな首相に委ねることが国益にかなうとの判断を示した。「EUとまとめた離脱合意案の支持を求め、全力で下院議員を説得したが、成し遂げられなかった」と無念さをにじませている。

 首相に就任したのは、2016年の国民投票で離脱が決まった後だ。EUとの交渉の末、昨年11月に合意案をまとめたものの、下院で3度否決されている。下院は代替策を探る投票で、離脱撤回など8案をいずれも否決した。

 局面を打開しようと新たに示した案があだになった。条件付きで2度目の国民投票を容認するものだ。再実施を否定していたメイ氏の転換に与党内の離脱強硬派などが反発した。信任投票を行い、辞任時期を早期に示すよう迫るべきだとの声が強まっていた。万策尽きての退陣である。

 与党内には残留派もおり、一枚岩ではない。野党との妥協点も見いだせない。離脱は当初の3月から2度延期され、EUは「3度目はない」との立場だ。再交渉も拒んでいる。トップが交代しても厳しい状況は変わらない。

 期限の10月末まで残された時間は長くない。袋小路から、どう抜け出すか。新首相は難しいかじ取りを迫られる。

 メイ氏は6月7日に党首を辞任し、次の党首を選ぶ具体的な手続きが翌週に始まる。7月中にも後任が就任する見通しだ。決まった時点で首相職も退く。

 英メディアによると、立候補者や出馬濃厚な議員は多く、既に乱立状態になっている。最有力と目されるのは強硬派のジョンソン前外相だ。「合意なき離脱に備える必要がある」と述べ、合意の有無にかかわらず10月末までに離脱する覚悟を語っている。

 取り決めのないまま踏み切ることになれば、英国とEUの双方で市民生活や企業活動が深刻な打撃を受ける恐れがある。影響は世界経済にも及ぶ。最悪の展開は避けなければならない。

 英経済界からは混乱回避を望む声が相次いだ。英産業連盟の事務局長は議会で妥協と合意を模索するよう要求し「全ての政党の政治家や次の首相になろうという議員に、この機会を新たなスタートと捉えるよう求めたい」と訴えている。応える責任が重い。

(5月27日)

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