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年金制度改革 党利を排し議論してこそ

 年金制度の在り方を議論するきっかけにすべきではないのか。

 老後の蓄えの必要性を指摘した金融審議会の報告書について麻生太郎金融担当相が受け取らない意向を示した。参院選を控え、不利な材料を封印しようというのなら無責任である。

 「人生100年時代」に備えて計画的な資産形成を促した報告書だ。前提として収入や支出などの現状をまとめている。

 男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦のみの世帯で、公的年金を中心とする収入から支出を差し引くと、月5万円の赤字になると試算した。その先、20年生きるなら1300万円、30年なら2千万円の蓄えが必要としている。

 少子高齢化によって今後、年金の給付水準の調整が見込まれることも指摘した。

 赤字額は統計などを基に平均的な姿を示したものだ。現役世代が減る中、年金給付の見直しは避けて通れない。ごく常識的な捉え方と受け止める。

 野党から「責任放棄」などと批判されて政府、与党は火消しに躍起だ。安倍晋三首相は参院決算委員会で「不正確で、誤解を与えるものだった」と釈明した。麻生氏も著しい不安や誤解を与えているとする。どんな誤解があるというのか。詳しい説明を聞きたい。

 政府の対応には他にも疑問がある。5年に1度、年金財政の健全性をチェックする「財政検証」が公表されていないことだ。経済成長のパターンごとに、現役世代の平均手取り収入に対する厚生年金の給付水準を示す。前回は2014年6月3日だった。

 政府側は「必要な作業が終わり次第公表する」と述べるにとどまり、時期も示していない。参院選後に先送りする考えなのか。

 04年の改革時、政府は平均手取り収入の50%の水準を確保するとした。次回の検証までに50%を下回ると見込まれる場合、負担と給付の在り方を見直すことになっている。今国会で審議できるよう政府は早く公表するべきだ。

 党利優先に見えるのは野党も同様である。有権者にアピールしようと政権批判を繰り返すばかりでは議論が本質からそれる。

 年金をはじめ社会保障制度は国民生活の根幹に関わる課題だ。政争の具にしてはならない。

 安心につながる持続可能な制度をどう構築するか。負担と給付の在り方について突っ込んだ議論が欠かせない。党派を超えて掘り下げ、改革に取り組む態勢づくりを与野党双方に求める。

(6月12日)

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