長野県のニュース

斜面

電話の向こうから聞こえる声は不安に揺れ動いている。長野市の県精神保健福祉センターに相次いで寄せられている引きこもりの相談だ。当事者の訴えは切ない。「犯罪予備軍のように見られる」「自分が事件を起こすのではないか」

   ◆

川崎と東京で起きた事件が引きこもりの人と家族に動揺を広げている。引きこもりを事件と結び付けて「厄介者」のごとく排除する空気が社会を覆っている。引きこもらざるをえずひっそり生きているのに、たたかれる現実(小泉典章所長)は理不尽だ

   ◆

センターにはこんな電話もかかってきた。20歳前後の息子が中学のころから引きこもって暴力をふるうようになったという父親からだ。誰にも話せず悩んだ末にある時、自分のプライドを捨て思い切って本人と一緒に精神科医を受診した。治療を受けて今は暴力が収まったという

   ◆

引きこもりは周囲に「弱さ」を共有してくれる人間関係を持たない人たちが中心だ。今の世の中は自立を求める「自己強化型社会」で学校や企業ばかりか家族が一番強く要求している―。日本精神衛生学会ひきこもり研究班座長の高塚雄介さんの指摘だ

   ◆

東京の76歳の元官僚は妻や自分に暴力をふるう44歳の長男が小学校の運動会の音に腹を立て「ぶっ殺してやる」と口にするに至って殺意を抱いた。周囲や専門家にSOSを出すのを阻んだのはプライドなのか、それとも…。知人に自慢していたという父の手にかかった長男もあわれである。

(6月12日)

最近の斜面