長野県のニュース

地上イージス 配備ありきで進めるな

 正確に調べる気があったのか疑わしい。

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡り、防衛省が実施した調査である。陸上自衛隊の新屋演習場(秋田市)を「適地」と結論付けた調査に誤りが見つかった。

 ほかに配備できる場所がないか19カ所を検討した。いずれもレーダーを遮蔽(しゃへい)する山があることなどを理由に「不適」とした。それなのに9カ所が誤りだった。山を見上げた角度である仰角が、実際より大きくなっていた。

 候補地から見た山の「高さ」と「距離」を、異なる地図から算出した。距離を定規で測り、三角関数で計算するなどしたという。その地図の縮尺が異なっていた。

 縮尺が異なる地図をそのまま比較したら誤りが出るのは当然だ。担当者はそれに気が付かなかった。確認作業は分度器を使った。

 約4度の仰角なのに約15度と記されていた場所があった。ほかは約5度から約2度の誤差だ。稚拙な調査である。候補地に決めることを前提に、その場しのぎで行われた疑念が拭えない。

 イージス・アショアは米海軍や海上自衛隊のイージス艦と同様のレーダーやミサイル発射装置などで構成する。北朝鮮による相次ぐミサイル発射を踏まえ、政府が2基導入を閣議決定した。

 候補地は、秋田のほかは、山口県の陸自演習場だ。周辺住民には生活への影響を不安視する声や、攻撃目標になるとの懸念がある。

 調査は地元に理解を求めるために実施した。防衛省が8日に秋田市内で開いた説明会では、東北防衛局の職員が居眠りをして、参加住民から批判を浴びている。

 計画に慎重姿勢だった秋田県の佐竹敬久知事は協議を白紙に戻す考えを表明した。「防衛省の基本的な姿勢には甚だ疑問がある」と述べた。山口県でも地元町長が反発している。当然だろう。

 防衛省は計画は不変との立場を崩していない。北朝鮮を巡る状況は米朝会談などで目まぐるしく変化している。今後の動きを見極めることが欠かせない。計画に懸念を示すロシアとの関係にもマイナスだ。計画にこだわる理由に説得力はあるのか。

 総額は6千億円近くに膨らむ可能性がある軍事装備の購入で、米国との関係を堅固にする政府の思惑も透ける。

 防衛は国の専権事項として、住民を置き去りに前のめりに計画を進めることは認められない。配備方針の見直しを政府に求める。

(6月12日)

最近の社説