長野県のニュース

県産山田錦 一から酒造り 中野の志賀泉酒造 自社栽培10年 本格販売にめど

山田錦の苗を植えた水田を見渡す志賀泉酒造の中山治社長=中野市山田錦の苗を植えた水田を見渡す志賀泉酒造の中山治社長=中野市
 清酒製造の志賀泉酒造(中野市)が、中野市内で自社栽培した酒米「山田錦」で仕込んだ日本酒の本格販売を始める。山田錦は酒米の最高峰とされるが、気候が比較的冷涼な県内ではリスクを伴うためほとんど栽培されていない。同社は「県産山田錦」をアピールすることで新たなファン層を獲得できると判断。10年ほどの試行錯誤を経て、2019年産米の醸造分から本格販売できるめどが立った。

 山田錦は精米時に粒が割れにくく、最高級の大吟醸酒造りなどに使われる。農林水産省の推計によると、全国で18年に生産された酒米は9万6千トンで、このうち山田錦が3万4千トンを占める。兵庫県が一大産地で、全国新酒鑑評会に出品される清酒にも兵庫県産が多く使われている。

 一方、長野県が酒造好適米として栽培を奨励する5品種に山田錦は含まれない。県農業技術課によると、山田錦は晩生で収穫期は10月中下旬。丈が長く倒れやすい、冷夏には実りにくいといった特徴があり、冷涼な場所が多い県内での栽培はリスクを伴うという。県内で18年に生産された酒米の推計量は、美山錦が3898トン余で最大。次いでひとごこちが1378トン、金紋錦が300トンなどだった。

 それでも志賀泉酒造の中山治社長は「地元産の山田錦を使った日本酒は付加価値が高まり、需要が見込める」と期待。10年ほど前、中野市内で独自に栽培を始めた。兵庫県を訪ねて栽培技術を学び、県外から玄米を取り寄せ、知人の農家の協力を得て育苗。70アールの水田で栽培し、収穫後は酒の仕込みに活用してきた。

 山田錦を栽培するノウハウを蓄積できたため、商品化に乗り出そうと県産のコメとして「産地品種銘柄」の登録を国に申請。この登録が認められ、19年産米の醸造分から、販売する清酒のラベルに県産山田錦が原料だと表示することができるようになる。

 中山社長は「温暖化や異常気象の影響が広がっており、現在の産地が今後も安定供給し続けられるか分からない」と指摘。「『酒どころ』の信州で、もっと酒米の栽培が広がっていいと思う。時間はかかるかもしれないが、県産山田錦で勝負して鑑評会で賞を取れる酒ができたらうれしい」と話している。

 県内では同社以外にも「神渡」醸造元の豊島屋(岡谷市)が中信地方で山田錦の契約栽培に取り組んでいる。

(6月13日)

長野県のニュース(6月13日)