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香港大規模デモ 一国二制度が危機に直面

 中国の圧力で民主主義が脅かされている強い危機感の表れだ。香港で市民による大規模なデモが続いている。

 12日は警察が催涙弾を使用し、負傷者が出た。1997年に英国から中国へ返還されて以降、最大の混乱に至る可能性がある。高度な自治を認めた「一国二制度」は危機に直面している。

 発端は、台湾で恋人を殺害した容疑者が香港に逃げ帰った事件だ。台湾とは身柄の引き渡し協定がないため香港政府は4月、協定がない国・地域への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を立法会(議会)に提出した。

 問題になったのは中国への身柄引き渡しが可能になる点だ。香港政府は「政治犯は対象外」とするが、中国が刑事事件をでっち上げ、共産党に批判的な活動家やジャーナリストらの引き渡しを迫るのではないか、と民主派は猛反発している。経済界も、中国企業とのトラブルで同じ目に遭うのではないかと心配する。香港市民にとって、それは杞憂(きゆう)ではない。

 返還から22年間、中国は政治に介入し続けてきた。普通選挙を導入しないまま民主派が当選しにくい間接選挙を続け、意に沿う人物を行政長官に就けている。

 14年に選挙制度改革を訴えて学生らが民主化運動(雨傘運動)を起こしたが、実現しなかった。16年に中国の全国人民代表大会(全人代)が示した香港基本法(憲法に相当)の解釈によって、反中派議員の資格が剥奪された。雨傘運動を率いた学生らも有罪判決を受けている。

 言論の自由も危うい。中国資本の大手出版グループが市場を独占し、民主派の書籍が店から消えている。中国本土の禁書を扱った書店の店長らは中国で長期間拘束された。香港に戻ったものの、条例改正を前に身の危険を感じて台湾へ渡っている。

 雨傘運動の挫折で民主化運動は下火になったともみられていた。それが9日のデモは主催者発表で雨傘運動をしのぐ103万人が参加した。積年の反中感情に火が付いた、ともみることができる。返還後の市民は「香港人」の自我が芽生え、独立を目指す急進派グループも生まれている。反発の素地を作ったのは、強硬に本土化を進める中国にほかならない。

 改正案は習近平政権が支持を鮮明にし、20日にも可決される可能性がある。撤回を求める市民運動も熱気を増している。混乱を逆手にとられ、自治がさらに脅かされないか、注視が必要だ。

(6月13日)

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