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首相イラン訪問 米政権をいさめられるか

 安倍晋三首相がイランを訪問し、ロウハニ大統領、最高指導者ハメネイ師と会談した。

 核合意を巡り、イランと米国の対立が深まる中、仲介役を買って出た格好だ。

 首相はロウハニ氏との共同会見で「緊張緩和に向け、できる限りの役割を果たしたい」と述べた。長年の友好関係を損なわない言葉通りの外交努力が求められる。

 トランプ米大統領は昨年、核合意から一方的に離脱した。イランの内政と外交を覆すような12項目の要求をまとめ、再交渉の条件として突き付けている。

 他国の企業と取引できない経済制裁も復活させた。イランの歳入の4割を占める原油の全面禁輸にも踏み切っている。

 ロウハニ政権は核合意に踏みとどまるものの、国内経済は日を追って疲弊する。5月には核合意の履行を一部停止すると公表し、イラン支援を模索する欧州との間にも亀裂が生じ始めた。

 中東に空母や爆撃機を派遣した米国との武力衝突の懸念が高まっている。きのうはイラン南方のホルムズ海峡付近で、日本の海運会社が運航するタンカーなどが襲撃される事件が起きた。

 首相の訪問は、米大統領からの直接の依頼がきっかけだった。トランプ氏は「戦争なんて望んでいない」と話したという。首相はこの時、米国が譲れる線をたださなかったのだろうか。

 ロウハニ氏は会見で「緊張激化は米国による経済戦争が原因だ」と訴えた。原油禁輸を解けば対話の可能性が生まれるとした一方、「もし戦争が始まれば断固として対抗する」とも述べている。従来の姿勢を崩していない。

 安倍首相は「核合意の順守を期待する」と自制を促した。イランが介入するシリアやレバノン、イエメンの内戦を念頭に置いたのだろう。中東の安定には「イランが建設的な役割を果たすことが不可欠だ」とも指摘した。

 イランの立場では、深く関与する中東の国々はイスラエルとの対抗上、欠かせない安全保障圏域に当たる。「建設的な役割」は、露骨にイスラエルやサウジアラビアに肩入れし、イラン包囲網を築こうとするトランプ氏にも求めなければならないはずだ。

 ロシアとの北方領土交渉が暗礁に乗り上げ、北朝鮮は対話の呼びかけに応じない。首相には参院選を前に、外交得点を稼ぎたい思惑があったとされる。成果になるか否かは、米政権をいさめられるかどうかにかかる。

(6月14日)

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