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<鋭く屈曲した水路である。…北側は浅瀬や岩礁が多く、大型船が通過できるのはオマーン半島寄りの幅四キロほどに過ぎない>。作家堺屋太一さんが石油危機をテーマにしたデビュー作「油断!」で描写したホルムズ海峡の光景である

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中東からの石油が止まればどうなるか―。1969年、エネルギー政策の仕事に就いた当時の通産省で危機感を持ち、官僚の無策無責任さに怒りを覚えたことが執筆のきっかけという。有志で民間の大型コンピューターを借りシミュレーションを試みた

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1年の海峡閉鎖で国民総生産の7割が失われる―との結果に驚き、予測小説の形で世に出すことに。そこで書くことが好きだった堺屋さんにお鉢が回ってきた。海峡の様子は海運会社の役員が克明に話してくれた。ほぼ小説を書き終えた73年、中東戦争が勃発、危惧が現実となる

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トイレットペーパー買い占めも起き、混乱を助長しかねないと出版を2年後に延期。それでも大ヒットした。オイルショックは「水より安い」といわれた原油がぶ飲みの産業構造を省エネに向かわせる転機となった。小説に書かれた備蓄拡大も実現した

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ホルムズ海峡は今も輸入原油の8割が通る生命線だ。タンカー攻撃は誰の仕業か、米国とイランの非難合戦に真相は見えない。<抜本的なエネルギー政策の樹立にはまだ遠い。…小説に描かれた危機は、今なお存在する>。2月に亡くなった堺屋さんは全集の解説でも警鐘を鳴らしていた。

(6月15日)

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