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男性の育休 職場の風土を変えねば

 育児休業を諸外国より長く取れる制度があるのに実際に取得する父親はごく少ない―。国連児童基金(ユニセフ)の報告書の指摘である。男性の育休に“見えない壁”が立ちはだかる日本の実情を浮き彫りにしている。

 経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)に加盟する41カ国を調べた。休業中の給付金を加味し、賃金全額が支給される日数に換算すると、男性では日本が30・4週で最も長かった。続く韓国の17・2週、ポルトガルの12・5週を引き離している。

 一方、厚生労働省の調査で2018年度の男性の育休取得率は6・16%にとどまる。6年続けて伸びてはいるものの、8割を超す女性との開きは大きい。政府が掲げる20年度に13%の目標達成もおぼつかないのが現状だ。

 1992年に育児休業法が施行されて30年近くになる。その後、休業中の給付金の割合を引き上げてきたほか、父母がともに取ると育休期間を延長できる特例も設けて男性の取得を促してきた。

 96年度にわずか0・12%だったことを思えば、状況は変わってきてはいる。とはいえ、取得率は大きくは伸びず、取った日数も半数以上の人が5日未満と短い。取りたくても取れず、取れても長くは無理という実態が見て取れる。

 何が妨げになっているのか。厚労省の調査では「職場が育休を取りづらい雰囲気」を挙げた人が最も多かった。迷惑をかけられないから、などと考えて諦めてしまう人はいまだに多い。

 パタニティー・ハラスメント(パタハラ)も問題になってきた。育休や短時間勤務を選んだ男性が嫌がらせや不利益な扱いを受けることを言う。「出世に響くぞ」「復帰しても仕事はないかも」といった発言は典型だ。

 育休を取ったら昇給の対象から外された、降格されたといった事例もある。インターネット上では最近、「夫が復帰直後に転勤を命じられて退職した」という書き込みが波紋を広げた。

 共稼ぎが当たり前になっているにもかかわらず、育児は女性の仕事とする意識が根強いことも背景にある。女性に過重な負担を押しつけ、性差別にもつながっている意識を改め、職場からパタハラをなくしたい。

 取得率100%の目標を掲げ、成果を上げている企業もある。労働行政の役割とともに各企業の姿勢が問われる。同時に、働く人たちが自ら動き、職場の風土を変えていくことが欠かせない。

(6月17日)

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