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土石流災害 避難につながる備えを

 南木曽町の読書(よみかき)地区で発生した土石流災害から5年が過ぎた。

 激しい雨が降り、地区を流れる梨子(なし)沢を下った土砂が民家を押し流した。中学1年の男子生徒1人が犠牲になっている。

 集中豪雨は毎年のように日本列島を襲う。山に囲まれた信州は、土砂災害の危険性が高い斜面の近くに多くの人が住んでいる。

 今年も大雨が多発する梅雨の末期になる。危険が迫った状況を住民に伝える態勢はできているか。危険箇所の周知は十分か。悲劇を繰り返さぬよう、それぞれの地域で備えを見直す必要がある。

 山に降った雨が集中しやすい梨子沢は5年前を含め少なくとも過去に4回、土石流災害があった。町内の他の沢にも被害の記録があり、土石流は地元で「蛇抜(じゃぬ)け」と呼ばれ、恐れられてきた。

 同じような条件の中山間地は、県内各地にあるだろう。市町村が作成したハザードマップで身の回りの危険を確認しておきたい。

 南木曽町では、マップを集会所の玄関に掲げ意識喚起を図っている地域もある。各自治体は、配るだけでなく住民に関心を持ってもらう工夫を重ねてほしい。

 5年前の災害では、町が避難勧告を出す前に土石流が起き、後手に回った対応が批判を浴びた。どのタイミングで避難を呼び掛けるか。今も明確な答えはない。

 気象庁などが発表する観測データは年々精緻化が進み、雨の降り方や河川の危険性に関する情報は充実した。土砂災害警戒情報も今年2月から精度が上がった。

 自治体には、多くの情報を読み解きながら避難の勧告や指示を出す役割が課せられている。気象庁は、エリアごとに担当を設けるなど自治体との「顔の見える関係」を重視し始めた。連携を深め、的確な発信に努めてほしい。

 湿った空気が南海上から盛んに入り込み、局所的な大雨が降る現象は近年、珍しくなくなった。海水温の上昇など、地球温暖化が影響しているとの見方がある。

 砂防ダムや堤防を越えて被害が及ぶケースが相次ぎ、ハード面の対応の限界も指摘される。昨年の西日本豪雨では、行政の呼び掛けが実際の住民避難に結び付きにくいという課題も浮かんだ。

 南木曽町の土石流で息子を亡くした母親は今年、本紙の取材に書面で応じ、災害について「自分たちで何ができるのかを、常に考えていきたいです」と結んだ。

 重く受け止めたい。私たち一人一人が、激甚化する災害の現実と向き合っていかねばならない。

(7月10日)

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