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かんぽ不正販売 顧客軽視も甚だしい

 国の信用を後ろ盾にした保険会社で、これほどの不正があったとは驚かされる。

 かんぽ生命保険の不正販売が次々と明らかになった。顧客に不利益が生じた契約は9万件を超える。郵便局員らが売る保険商品の信頼は失墜した。金融庁には業務改善の徹底指導を強く求める。

 不正の内実は深刻だ。保険契約を新たに「乗り換え」させた顧客に対し、新旧契約の保険料を故意に二重払いさせていた。6カ月以上の二重払いは判明分で約2万2千件に及ぶ。また、旧契約解約から新契約締結までの期間を引き延ばし、約4万7千件を一時的に無保険状態にしていた。

 不自然な契約の裏には、販売する郵便局員らが営業成績を伸ばすための「からくり」がある。

 同社は「乗り換え」の営業成績を通常契約の半分しかカウントせず、成績に応じた手当も低い。ただ、新契約締結から旧契約解約までが6カ月以上ある場合や、先に行った旧契約の解約から4カ月目に入った新契約の締結は「乗り換え」に該当しない。そこで局員らは顧客の不利益を承知で解約や締結の時期をずらし、「乗り換え」扱いを避けた可能性がある。

 背景には過剰な成果主義があった。ある局長の証言だと、保険の販売目標は民営化後に倍になり、目標未達成者の名前が公表されるなど圧力が強まったという。増えた顧客の負担を自腹で立て替えていた局員もいるという。

 同社は既存契約の解約後に乗り換え契約の審査をすることが多く、健康悪化を理由に再契約できないなどの不利益を被った例も5年間で約2万4千件近くあった。

 保険業法は販売で虚偽の説明をしたり、不利益となる事実を告げずに「乗り換え」させたりすることを禁じている。不正販売の一端が明るみに出た当初、日本郵政社長は早々と「法令違反はない」と強弁したが、一連の販売は適法なのか。かんぽ生命社長は10日、非を認めて謝罪している。

 速やかに状況を把握し、正確な情報を市場に提供する上場企業としての能力があるのか疑わしい。営業の現状や時代に合わない目標を掲げていた経営陣の責任は重い。民営化は現場への圧力によって成し遂げるものでもない。

 生命保険は今後の人生に備える「安心」を売る商品だ。顧客の利益を軽視する会社からは買えない。同社は対策本部を設置し、顧客救済や営業目標の見直しに取り組むというが、自ら壊した信頼を築き直すのは容易でない。

(7月11日)

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