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参院の改革 存在意義の問い直しから

 今回の参院選で選ばれる議員は前回の2016年より3人多くなった。議席数は124である。

 昨年の公選法改正で定数が6増となり、今回はこのうち3増が適用されたためだ。定数増は沖縄の本土復帰に向け、沖縄選挙区を新設して2増した1970年以来、約50年ぶりだった。

 異例といえる制度改革は「1票の格差」の是正のために始まったものの、自民党に都合のよい小手先の手直しに終始した。15年の改正で約束した「抜本的な見直し」とは懸け離れた改革だった。

 選挙制度の改革は、議会政治の土台にかかわる。衆参両院の役割や国会の在り方を含めた幅広い議論が欠かせない。

 国民の理解を得られているのか。1票の格差をなくすにはどうすればいいのか―。各党は国会改革の方向性と将来像を、選挙戦で議論し有権者に示す必要がある。

<抜本見直しの約束>

 昨年の公選法改正の経緯を振り返りたい。

 始まりは6年前の参院選で、1票の格差が最大4・77倍に開いたことだ。投票価値の不均等が憲法で定めた「法の下の平等」に反するとの訴訟が相次ぎ、最高裁は「違憲状態」と判断した。

 与党は「10増10減」で格差を縮小し、16年の参院選に臨んだ。問題は「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を導入したことだ。人口の多い県の候補者が有利になりやすい欠点がある。

 15年の改正公選法は付則で、19年の参院選に向けて選挙制度を抜本的に見直すと定めていた。

 昨年の改正では各党から全国11ブロックの大選挙区制、9ブロックの比例代表制、選挙区と比例代表の定数変更などの案が出た。

 自民党の提案は唐突だった。定数6増と、比例代表への特定枠新設である。合区選挙区を維持し、埼玉選挙区の定数を2増、比例代表を4増する内容だ。

 特定枠はあらかじめ定めた順位で当選者が決まる。合区した選挙区で擁立できなかった候補者を救済する狙いだった。与党は10時間ほどの審議で採決を強行した。

<議論は深まらず>

 問題は多い。まず合区を維持したことだ。合区は投票価値を平等にするための対症療法だ。人口減が進めば飛び地の合区をつくる必要も出てくるだろう。有権者には参院が遠い存在になりかねない。

 自党の候補者救済を優先させた国会審議には、選挙制度の抜本改革という視点はない。幅広い合意をつくる努力もなされなかった。

 「1票の格差」を是正し、同時に地方の声を国に反映させる方策は簡単ではない。

 選挙区定数を大幅に増やし、比例代表を大幅に減らせば格差は3倍以内に収まるとの試算もある。ただし、大都市の議席が増えるのは避けられない。地方に配慮すれば投票価値の差を埋めにくい。

 自民党は今回の参院選の公約で掲げた憲法改正の条文イメージに「合区解消」を挙げた。「1票の格差」の大小にかかわらず、各都道府県から毎回最低1人を選出できるように明記する内容だ。

 国会議員を全国民の代表と定める憲法43条に矛盾する。平等な選挙権をどう考えるかも課題だ。

 一方の野党は公約で、比例代表中心とした制度への移行や、議員定数の削減などを訴えている。

 与野党とも抜本改革に向けた論戦は乏しい。選挙区と比例代表を組み合わせた現在の制度の根幹も問われる問題だ。各党は将来ビジョンを有権者に示す責任がある。

<原点は「良識の府」>

 参院の在り方そのものも考えねばならない。

 内閣が解散権を持ち、けん制できる衆議院では、最大党派と内閣が融合しやすい。与党が圧倒的な議席を持つ場合はなおさらだ。

 参院の特徴は6年間の任期が保証されていることだ。内閣に参院の解散権はなく、参院は内閣を不信任できない。内閣に対する独立性が高いといえる。

 二院制の意義はダブルチェックにある。参院は政権と一線を画して、長期的な視点で独自に審議できるはずだ。「良識の府」「熟議の府」と称された理由だ。

 現在の参院は、衆院の「カーボンコピー」にすぎない。

 17年の通常国会で参院は、委員会採決を省略する「中間報告」の禁じ手を使って共謀罪法案を成立させた。

 今年の通常国会でも、野党が要求した予算委員会の開催要求を衆院同様に与党が拒否した。政権の意向に沿い、数の力で採決の強行も繰り返している。反対意見や議論を封じる姿勢は、参院の存在意義を根本から損なう。

 参院の本来の役割を果たす方策を考える必要がある。閣僚を出さない、党議拘束を緩めるといったルールも検討するべきだ。

 参院はどんな機能を担うのか。原点に立ち返った議論なしでは将来は語れない。

(7月12日)

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