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食い止めに全力挙げねば 豚コレラ

 豚コレラに感染した野生のイノシシが木曽と下伊那で相次いで確認された。急速な拡大につながりかねない状況だ。養豚場での感染を防ぐ対策に全力を挙げなくてはならない。

 木曽町と根羽村で、死骸が見つかったり捕獲したりした5頭が感染していた。いずれも感染経路は分かっていない。多くのイノシシの感染が確認されている岐阜県、愛知県から県境を越えて広がった可能性がある。

 木曽町で最初に死骸が見つかったのは岐阜県境から20キロほど長野県側だという。木曽町と根羽村は直線距離でおよそ70キロ離れている。イノシシの行動範囲が半径数キロ〜数十キロにわたることも考えると、県内の広い範囲に感染が及んでいる恐れが否定できない。

 2月に上伊那郡宮田村の養豚場で豚コレラが確認された際は、愛知の養豚場から直前に仕入れた豚が原因だった。今回、事態はより深刻と見るべきだろう。

 感染力が強く、致死率が高い伝染病だ。養豚場に広がれば、甚大な損害が避けられない。野生動物が入り込まないよう防護柵や電気柵を設ける、車や靴の消毒を怠らない、といった対策を再度徹底することが欠かせない。

 岐阜、愛知では野生イノシシへの経口ワクチンの散布を既に行っている。長野県は9月にも始める予定を木曽で前倒しするほか、下伊那でも検討するという。対応が後手に回っていないか、あらためて点検する必要がある。

 養豚業者からは、イノシシだけでなく豚へのワクチン接種を求める声が出ている。ただ、政府は否定的な姿勢を変えていない。投与すると、国際的に「清浄国」とみなされなくなり、輸出に影響するためだ。再び清浄国と認められるには時間がかかる。

 とはいえ、ためらっているうちに打つ手がなくなりはしないか。現時点では避けるというなら、どの段階で投与に踏み切るのかを明確にしておくべきだ。

 豚コレラは昨秋、国内では26年ぶりに岐阜の養豚場で発生した。外国人旅行者らが持ち込んだ豚肉製品などにウイルスが含まれていて、イノシシを介して豚に感染したとみられている。初動のまずさから早期の封じ込めに失敗し、今も終息の兆しは見えない。

 防疫の強化とともに大事なのは、消費者の不安をあおらないことだ。豚コレラは人には感染せず、仮に感染した肉を食べても人体に影響はない。正確な情報を伝えることも行政の役目である。

(7月17日)

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