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7.21参院選 与党が勝利 「安倍改憲」に民意ない

 参院選は与党が勝利した。自民と公明で合わせて改選議席の過半数を確保した。

 安倍晋三首相はもともと、「非改選と合わせ過半数確保」という低い目標を設定していた。それを大きく上回ったことで求心力は維持される。

 首相は「憲法改正」の必要性を訴えてきた。今回の勝利で、国会で改憲に向けた動きを加速させるだろう。ただし、民意は改憲にはないことは世論調査の結果をみても明らかだ。

 「安倍1強」の下、自民党内には首相や党執行部の方針に異を唱えにくい空気が広がる。与党はこれまで、数を武器にした強引な国会運営を続けてきた。官邸の意向が与党の意向になり、審議が熟していなくても採決を強行した。

 先の通常国会では規則に沿って野党が要求した予算委員会の開催を拒否し、議論の機会すら奪った。その姿勢は少数の意見に耳を傾け、熟議する民主主義の根幹を破壊しかねない。

 秋の臨時国会に向けて、安倍政権の動向に厳しい目を向けていかなければならない。

<政策すり替えるな>

 安倍首相は街頭演説で9条に自衛隊を明記する必要性を何度も主張。改憲案を紹介する冊子も各地で配布した。

 首相は「憲法を議論する政党か、議論を拒否する政党か」と繰り返した。これに対し、野党は「結論ありきで、強引に議論を進めようとする自民党の姿勢に問題がある」などと反論した。選挙戦が抽象的な主張の応酬に終始する中で、改憲の必要性など本質的な論議は深まらなかった。

 有権者は改憲を支持したとはいえない。共同通信社が12、13日に実施した世論調査では、安倍政権下での改憲には半数超が反対し、賛成は3割強だった。6月下旬の調査より、むしろ反対の割合は増えている。

 本社が16日にまとめた参院選に関する世論調査でも、投票で重視する政策や課題(三つ以内)で、「憲法改正への姿勢」は6位で16%だった。一方で「景気・雇用などの経済対策」「医療・福祉・介護」がほぼ半数を占めている。有権者が求める政策をすり替えてはならない。

 改憲は国会が発議する。主権者である国民が求めていないのに、首相の信条に基づく改憲論議を進めることに無理がある。

 もう一つの争点は年金制度の将来像だったが、議論は具体性を欠いた。その理由は、年金財政の健全性をチェックする「財政検証」を政府が公表していないからだ。

<議論を避ける姿勢>

 現状が不透明では、将来の財源確保につながる保険料負担や税制全体の見直しも、根拠を示して競えない。各党の主張は実現への道筋が不透明のままだった。

 与党は3月に予算が成立した後、衆参ともに予算委員会を開かないまま、6月下旬に通常国会を閉じた。

 通常国会では、停滞局面に入りつつある経済の現状や対応策、手詰まり感がある外交問題などで、安倍首相と野党が正面から議論を交わす場面は少なかった。選挙戦に入っても有権者には問題点が分かりにくかったことは否めない。

 今後、日米貿易交渉も本格化する。米国は農産品の関税撤廃や大幅引き下げを求め、自動車の対米輸出制限も検討する。トランプ米大統領は「参院選までは取引を待つ」と表明している。安倍政権の求めに応じたのだろう。

 選挙戦では何を守って、何を交渉していくのか争点にならなかった。問題点を有権者に隠した与党の対応は不誠実だ。

 緊迫感が増すペルシャ湾情勢も、各国の状況を見極めて冷静に対応することが必要だ。

 これまでの姿勢を改め野党と真摯(しんし)に向き合って、解決策を広く話し合うよう政府と与党に求める。

<国民代表の自覚を>

 当選者は自覚してほしい。

 任期が終わる2025年までの6年間は、日本の将来を左右する重要な期間になる。

 25年には1947〜49年に生まれた団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる。医療費や社会保障給付が増え、財政運営がさらに困難になる。

 政府が目標に掲げる25年度の基礎的財政収支の黒字化は達成できるのか。費用の抑制策や税・保険料負担の在り方を、長期的な視野で検討しなければならない。

 人口減対策や東京一極集中の是正、経済政策なども課題だらけだ。混迷する世界情勢の中で、米国依存から抜け出し、平和主義を基軸にした多面的な外交の構築も必要になるだろう。

 国会議員として何を優先し、行動するべきなのか―。内閣に参院の解散権はない。政権の思惑や党利党略に左右されず、国民の代表として将来を見据え、議論を深めていかなければならない。

(7月22日)

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