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米軍機低空飛行 地方が連帯するしかない

 佐久地方で5月に米軍輸送機が低空飛行した問題で、在日米軍が本紙の取材に書面で回答した。訓練は不可欠だとした上で、訓練の自粛に言及せず、飛行ルートなどの運用情報も「公表しない」としている。

 県は今回の飛行を受けて国に情報の事前提供などを求めていた。本紙の取材で米軍に情報開示の意思がないとはっきりした。県が防衛省北関東防衛局に口頭で行った要請にどれほどの重みがあったか。はなはだ疑問だ。

 低空飛行は以前からある。1988年には県南部へ連日飛来し、本紙撮影の写真などで米戦闘機と判明した。前年に奈良県で低空飛行した米軍機が事故を起こし、訓練空域を変えたようだった。

 この時も県は当初口頭で外務省に中止を申し入れたが、同省は「文書によらないので正式な申し入れと理解していない」と動きが鈍かった。このため県は在日米軍と外務省を訪ね、知事名の文書で中止を要請している。

 政府は70年代まで、日米間で合意した区域の外で米軍の演習は認められないとの立場だった。それが奈良県での事故後、国会答弁で一部飛行訓練について「訓練空域が安保条約や地位協定に具体的に書いてなければ行動できない、とは考えない」と解釈を広げた。

 さらに99年に公表した日米合同委員会の合意では、低空飛行を「不可欠な訓練」と容認し、米軍は安全性を最大限確保し、住民への影響を最小限にする―とした。最低高度は航空法と同じ基準を用いている―としながら、国内法の順守義務は取り決めなかった。

 欧州では事故などを機に国内法を守らせる仕組みに変えている。なぜ日本ではこれほど米軍に配慮し、訓練情報の事前把握や検証の仕組みを整えないのか。奈良県の事故後も低空飛行中の墜落事故などは各地で起きている。

 全国知事会は昨年、これらの問題を重視して日米地位協定の抜本見直しを国に提案した。24日の会合でも「住民の安全は地方自治の問題」「抜本改定に向けて調査を進めて連帯する必要がある」との声が続出した。長野県の阿部守一知事も「住民の立場に立った時にどうあるべきか、対応を検討していく必要がある」とした。

 政府は米軍に事前情報を求め、関係地域に示すべきだ。今後も国が国民を守る責務を軽視するなら、地方が連帯するほかない。実態を調べて共有し、公表する。米軍にも地域の状況を伝え、住民の安全を最優先してほしい。

(7月29日)

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